テーマ '03.06 173 6C33C-B 34W DCパワーアンプ ドック入りU
  WEの4極管WE418Aハイゲイン差動アンプ搭載
        
以前のドック入り→173-6C33C-B-KATROZU

 
   

リンク変更について
http://www.geocities.jp/ph7833/dc_amp/WE418A.HTM
朱書部を
ph7dc.but.jp に変えてください

   
プロローグ  以前に当ラボにドック入りした「6C33C−B」のそのものが、ひょんなきっかけで、所有者が変わり再度ドック入りした。故障したこのアンプを2度も診ることになった。なんと嬉しい事か?
 前回同様、依頼主には保障はしない。が・・・と言ってあるが、依頼主の真摯な情熱に駆られ今回は、特になんとかしたい。
 作るより時間はかかると思う。
 
 依頼からの顛末は個人情報を整理し後日掲載する

 なお、人生は知力「<2」、体力「>8」だ。とし、これは、これらの修復にも通じる。と前回記したが、知力も体力も減退した今は、根気と我慢しか無い。

  Every one
For me 
これはph7の備忘録随時内容校正あり

同じ状況に遭遇したときのために


2014.09.25
AOC基板から  AOC基板から確認した。関連して、定電流の回路図では418AのT1にRkとして13Ωが付いているが、明示的に取れるが可変する抵抗だ。金田先生の場合は13Ωであり、左右とも同じ値とは思わぬことだ。ここは、以前の修理にて固定抵抗を付けたと修理ノートにメモがある。左から1.2.3.4として1.2にはT2側に37Ωでバランスしたため36Ωの進を3.4にはT1側に2Ωを入れてあったのが、半固定抵抗に入れ替わっていた。所有者が418Aを変えたために再調整の必要が生じたのか?しかも3.4の半固定の空足にヒシチューブ代わりに配線コードの外被を被せたものだが、細い銅線1本が裸となって残っており、どこかと接触していたような状態になっていた。

 ピントが合っていないが、のところにヒゲのように出ている。右chの動作に悪さをしていなかっただろうと祈る。右chのRk用の黄色回転ヘッドの半固定VR(たまたまなのか13Ωとなっていた)。

 下は、定電流の左chのRk用の青色半固定VR(5.5Ωとなっていた)。再調整のため、これら2つの半固定を外し、ノーマルにしてから418Aの選別をやり直す。


 AOCの左chの調整用VRがサポートで嵩上げされていなかったので、嵩上げした。サポートを止めるネジには周りの半田と接触しないように写真のプラスチック製が良い。なお、既存の50Ω半固定TM-7Pの足は無理な折り曲げのためか、外すときに片側の足が根本から取れた(取れていたのか?)。そういえば、依頼者はこのAOCのVRだと思うが、ドライバーで調整の折、「VRが深いためVRの回転部金具とシャーシがドライバーでショートしたと思う」とのこと。


このドライバーはショートしないと思うし、半固定TM-7Pの回転部金具はVR内部のどことも繋がっていないことは、依頼者とともに確認している。


ドック入りパート1の「とある修理」では、
 「簡易に行うなら6C33C-Bのソケットに付いているスケルトン抵抗(100kオーム)の両端電圧を測定して左チャンネルと同じ数値になるように100オームボリュウムをゆっくり調整ドライバーでまわして下さい。」とのアンプ製作者の指導にて所有者がトライしたようだったのを思い出した。これに対して次のように返事をしている。
( !! バイアス電圧値をあわせることで問題は解決しないでしょう。球によって浅い深いがありますから。ph7 )
 結果:「真空管を交換するのなら簡単に出来る調整法がある」とのことで、教えて頂いて調整に入りました所、右チャンネル調整終了後左チャンネル調整中、左チャンネルの6C33C-B 2本とも熱暴走を起こしまして真っ赤になりましたので・・・」
との顛末だった。

 結局、これにより終段のIoを無視しての調整にて、相当大きな電流が流れたのだろう。熱暴走したのではなくて、熱暴走させた?が正しいのではないか。 そして、球のヒューズ切断までには至らなくとも、保護回路等周辺パーツ昇天したと思う。〜くわばらくわばら〜

  T1にRkを付すのはT1にIbの大きい物を配置するため

2014.09.26
忘却   自分の書いたドック入りパート1のレポートを読み返している。8年の歳月は、記憶をリセットし、瑞々しく別の人様のレポートのように思える。思い出せないことがあっても不思議ではない歳月だ。
 久しぶりにWE418Aを見た。これの管面シールドは好まないが、これで真空管の輻射ノイズの影響を抑えると聞いた。しかし、効果が無いとしてシールドが消え見通しが良くなった。
 図No. 注釈
 図19 定電流、定電圧
 図20 カレントミラー、定電流
 図21 AOC
 図22 保護回路DC検出
 図23 保護回路制御部
これらの基板は、回路図上では別ではと思うものも含まれ、パッと見ではなかなかどれがどれか難しいと思う。この注釈を印刷して、アンプ裏に貼らないと・・・歳かな?というよりは、念には念ということだ。勘違いや思い違いは沢山ある。

 今回の依頼者は、「左CHのカレントミラー、定電流基板TR4.5のC4578をC4686Aに換えた」とのこと。次の表からみても定格上は問題ない。
最大定格(Ta=25℃)
項目 記号 2SC4686A 2SC4578 2SC4572 2SC5460 単位
コレクタ・ベース間電圧 Vcbo 1500 1700 800 800 V
コレクタ・エミッタ間電圧 Vceo 1200 900 800 800 V
エミッタ・ベース間電圧 Vebo 5 5 7 5 V
コレクタ電流 Ic 50 50 20 50 mA
コレクタ電流(パルス) Icp 100 150 60 mA
ベース電流 IB 25 25 mA
コレクタ損失 Pc 2 1.75 1.75 1.5 W
接合部温度 Tj 150 150 150 150
保存温度 Tstg -55〜+150 -55〜+150 -55〜+150 -55〜+150
正面左から足並び BCE BCE BCE ECB
左CHのC4686A-TR4側(ドック1でph7が換えたのかも)

 今回の依頼者は、「保護回路制御部のマイナス側K851をK2967に換えた」とのこと。これはドレイン・ソース間電圧が250Vと高く、ON抵抗もK851の85mΩに比し48mΩと低く、No.193 WE421A・6C19Pパワーアンプの保護回路に実績あり。
最大定格(Ta=25℃)
項目 記号 2SK851 2SK2967 単位
ドレイン・ソース間電圧 Vdss 200 250 V
ドレイン・ゲート間電圧(Rgs=20kΩ) Vdgr 250 V
ゲート・ソース間電圧 Vgss ±20 ±20 V
ドレイン電流 Id 30 30 A
許容損失 Pd 150 150 W
チャネル温度 Tch 150 150
保存温度 Tstg -55〜+150 -55〜+150
正面左から足並び GDS GDS

  2014.09.26 













C4686Aに換えた覚えがないと依頼者のコメント!有りもしやph7がドックTで・・・2014.09.28
電源on   ようやく電源を入れられるようになった。基板のチェックとパーツ交換等で手間取った。初段の調整をしよう。その前に、各電圧が正常かどうかのチェツクは終えておく。
 初段の418A等の預かり分を下の写真に示す。412Aはもったいないことに1本割れている。それにこりてダイオード版も入手(散財)したとか。今回、高圧レギュレータは右下ph7所有のBEN6754を使う。


@まずは、レギュレータの412A(BEN6754)も418Aも入れずに電源電圧を確認する。
A次に、レギュレータの412Aを入れ電圧を確認する。+161Vと-280Vが出る。
B初段調整の最後は、いよいよ418Aを入れる。さて、どの順番に入れるか。下表の1回目は、管面シールドのないスッキリとした418Aを当初(ドック1)に足底に付した番号順とした。
 このままでは、T2側にRkを付すことになる。それでも良いだろうが、何回か入れ替えして1と2、3と4を交互にして5回目のとおりとなった。マニュアルのようにT1にIbの大きい物が配置された。
これでT1側にRk半固定50Ωを入れプレート間が0Vになるようにした。半固定の抵抗値は最終のようになったので、この程度なら、なかなかバランスの良い球ということではないか。

 調整の際は、入力にショートプラグ、スピーカー端子に8Ωの抵抗と決まっているが、最近の電流伝送パワーアンプでは入力には1KΩのシャント抵抗を入れたものとしている。

初段の選別
T1  T2

T1  T2
回目 正面から見て左から1〜4 1 2 3 4 備考
1 418と910Ω間電圧 8.45 9.53 8.08 9.79 V
160Vと418プレート間電圧 9.37 10.41 9.11 10.84 V
0.92 0.88 1.03 1.05 V
5 1回目のNo.と対応させると→ 2 1 4 3
418と910Ω間電圧      省略
160Vと418プレート間電圧 10.5 9.0 10.8 9.0 V
最終 正面から見て左から1〜4 1 2 3 4
418と910Ω間電圧      省略
160Vと418プレート間電圧 9.86 9.88 9.97 9.98 V
半固定の抵抗値 11.0 - 7.2 - Ω
  ※初段は、910Ω+VR分45〜52Ωに約10Vの電圧降下だから、10mA前後の電流が流れていることが判る。なお、特別な意味は無いが、カレントミラー基板のVRは預かった時のままとしておいての調整とした。(左のVRは45Ω、右は52Ω)
 その後、カレントミラー基板のVRを、左いっぱいにセットしての値は次のようになっており、上表の左45Ω、右52Ω相当の時より抵抗値が少なくなっているから電圧も下がっている。
正面から見て左から1〜4 1 2 3 4
160Vと418プレート間電圧 8.97 9.01 8.89 9.01 V

 いよいよ、タイマーをセットし、6C33C-Bに灯を入れる。何ともいえない瞬間が楽しみでもあり、緊張する。脳のカンフル剤に一役買ってくれることだろう。その前に、球を入れる前にVg3、Vg4の電圧を測る。
 今回の依頼者は、「スケルトン100KΩ間電圧VGを何度はかっても、うなく行かなかった」とのこと。
@カレントミラー基板のVRは、左いっぱいにセットしておく。
AVg3、Vg4グリッド電圧がVRの回転に合わせて動くが、マニュアルどおり(-180〜+50V位)ではない。まあ、多少の誤差ははあるだろう(実際は結構な差異がある)。この際、保護回路も含めてもう少し確認する箇所があるようだ。
T3 T4 T3 T4
No.173 1 2 3 4 備考
Vg3 Vg4 Vg3 Vg4
VR最小 92 -10 68 -20 V
VR最大 -110 -250 -122 -250 V
 なお、この時にAOCのVRを回すとこれらの数値も変わることを確認しておくこと。

  2014.9.27 
段取り8分    6C33C-Bに灯を入れる前に段取りがある。±160Vにヒューズを4本入れること(これは、依頼者が入れてあった)。+160Vにアンペア計を入れること。
 今回は、アンプ本体を裏返しにしないで調整したいから、ヒューズとアンペア計を代用する抵抗を一つの基板にまとめることにした。依頼者もこの基板をセットして置いたまま暫くヒヤリングを続ければ良いだろう。音に影響があるとしても、要因が分かっていれぱ後から除けば良いからだ。自分のリスニング環境全般に言えることだが、楽しいことは先延ばしにしている(そのうち何だったか忘れるかも)。
 アンプ本体を裏返しにしない理由は、ファンボックスを動作させておいて調整をしたい。そうしなければ、AOCの調整点が熱でづれてAOC追従ができなくなると思うからだ。
 写真の基板にパーツをまとめた。こうしなければ、ヒューズの絶縁やらアンペア計、それぞれの配線とテスターのリード線でクモの巣のようになる。そして、それらはトラブルのもとに繋がらないとも限らない。1Ωの抵抗の両端から配線しておき降下電圧を測るとIoが判る。この配線はアンプ背面の保護回路リセットSWを廃しこの穴から外に出すのが良い。あるいは、底板の適当な穴から出しても良いだろう。1Ωの電流検出抵抗だが、金田先生は良く10Ωを使うが、私は電圧降下も気になり回路に影響のないように1Ωとした(この1Ωだが、入れっぱなしにしておくことが多いということもあるのだ。)
(このアンプの製作例が何度か記事になっており、金田先生は「このアンプは触れないほど熱くなる」と述べておられる。・・・私は、どうも熱すぎるのはTRもFETも苦手なのだ。)
 1Ωの電流検出抵抗〜250mVで250mA
 10Ωの電流検出抵抗〜2.5Vで250mA ということで、1Ωの場合、頭のなかで変換しなくとも良いので、混乱しないこともメリット。



左がスペアとして預かった6本の内のもの
右は使用していたという4本の内のもの

ちなみにph7のものは図左上と同じだが、93 8と少し新しい。
さて、玉石混交とは言わないが、この際、今までの球はスペアとし、スペアの6本6C33(すべて依頼者がエージング済)の内の85 11の刻印のあるものを使ってみたいと思うが(なお、この内の1本は、中央のマークがない。)

6C33C-Bに灯を入れる前の段取りUとして、保護回路の動作確認が要る。
 図22 保護回路DC検出
 図23 保護回路制御部
を繋いでいる黄色のdetラインを外し、タイマ−を1分程度にして保護回路制御部detを0Vに触れると保護回路が動作するはずだ。
この時のT3.4のプレートにかかるはずの電圧は無負荷のため、160V前後となった。

  Pheased Approach
2014.9.28











1Ωでは250mVに設定
Resetの効能   アンプ背面の保護回路リセットSWを廃し・・・と前述したが、普段はカバーでも掛けて触れないようにしたいのだが、調整の折は重宝する。
 段取りVとして、上記黄色のdetラインを元に戻し、スピーカー端子(DC検出部のL・RchOutと0Vライン)に1.5Vの乾電池接触テストをする。今回は、左右chの乾電池正極・逆極テストをする。計4回だからその都度パワーSWをon/offしたくない。このようなときに、リセットSWで復帰させてテストをするのには便利だ。音楽を聴いていて、稀に保護回路が働く時があるが、この時は決してリセットSWには触れないで、パワーSWをoffにし、一息ついてonにする。その間、保護回路が動作した要因でも考えれば良い。
 6C33C-Bがセットされていないから、このようにラフなテストも可能だが、本番テストの折は、球が冷えるのを待つ必要がある。なお、+160Vラインは落ちるが、−160Vラインは落ちない
 乾電池接触テストだが、できれば1V以下の乾電池でも動作するから色々と試すのも面白い。以前は、0.7Vの乾電池でも動作した(当たり前)。なお、1.5Vでも触れただけでは駄目であり、0.5〜1秒ほどの時間を要するので、致命的なトラブルの場合、この間のスピーカー等への影響はどうなのだろう。
 (スピーカー端子にテスターを繋ぎ乾電池の接触後の電圧を監視すると、すぐに1.5Vに上がらず0.5〜1秒かけて0.6Vラインを超えるときに保護回路が動作するから、使い古しの乾電池は時間がかかる。これで、上記の疑問は解消した。なお、保護回路が動作するときdetラインは0Vになり、またすぐに元の6V程度に戻る 2014.10.04)

 
  2014.09.28
保護回路リセットSWはNo.195から廃止されている
灯入れ  もう少し
 もう少し確認するところがある。楽しみは後から・・・。
 アンプ製作時、hpの編集(メンテ)も行うが、これが良い塩梅にヒントを思い出したり、プロセスに変化をつける妙薬となる。びっちり半田コテを握っていると一つの思いに固まってしまう。このコーヒーブレイクは少し熱くなった感情を冷ましてくれる。

 全体像だ。回路はシンプルのはずなんだが、保護回路やAOC、高圧のレギュレータ等で複雑にしている。しかし、418Aの音も気になるし、6C33C-Bがエージングされて来れば、どう豹変するか楽しみだ。

 6C33C-Bのおさらい
 この球は、安定するまで30分位必要で、安定後バイアスを250mAに調整されているのが良いと自分では思っている(安定するまで15分位とMJ94.03で宍戸公一氏。音質的に安定するのに20時間と同氏。)この球の最大損失は60W。330mAで51Wの損失だから、余裕があると金田先生は言われるが、少し心配なので250mA39W損失としている。200mA31Wでも良いと思う。それぞれの音を聴いてみて、そんなに変わらなければ、低くても良いのではないか。
 MJ94.06松並希活氏は、「初段に418A使用時は必ず、発振防止用に1KΩ(入力にシリーズに)を入れること」と述べている。本記事では150Ωであり、これは、今後の検討事項となる。

   
fuseに感謝













bias
 いつまでチェックしていても仕方ない(というかこれ以上はチェックのしようがない。)と、心が決まってしまえば、この辺は案外いい加減なものだ。エイヤーと電源SWを入れる。この時の2分間の長いことと思ったら2分30秒にしていた。
 「ヴウーン」という音とともに球のプレートに高圧が印加される。球は前述のとおりのものを運を天に任せ左から1.2.3.4と番号を振りセットしてある。カレントミラー基板のVRは、左いっぱいにセットしてあるから、Ioは0mAであり、当然ながら100KΩのバイアス電圧も一定しない。VRを右に回していくと半分くらいのところだと思うが、少しずつIoが上がってきた。右chは上げすぎてマイナス側のヒューズが閃光とともに切れた。左chは330mAという自分の限界まで上げてみると数分でプレートが赤くなってきた(もしかすると、330mAを相当超えていたのかも。)電源sw/offである。最初のオーナーは、調整時のヒューズは入っていたのか否か不明だが、今回のケースで明快だ。左chのようにヒューズが入っていても、ヒューズの切れる直前まで電流が流れるとプレートは真っ赤になり、少し手遅れになるとあちこちのパーツを道連れにしてTHE END。あんなに細いにも関わらず歯を食いしばっているヒューズの有り難さが身にしみた。人間にもあれば良いのに。


 写真の右下デジタルテスター左chのバイアス電圧が -50.1V -46.9V となっている。その差3.2Vと少し開きがある。右chは下表のように申し分ない。
100KΩ間(グリッド・カソード間)の電圧
左から T1 T2 T3 T4
電圧 -50.1 -46.9 -49.2 -48.5
Io=250mA



 左chのIoだが、250mAに設定した。アンメータとテスターの表示は、ほぼ一致。1Ωの電流検出抵抗の精度が実証された。


 左chのオフセット電圧をデジタルで0.3mVと表示。AOCの威力だが、熱の影響か10分もすれば±10mVはずれる。この程度はパワーアンプでは何ら問題ないし、フアンを回せば安定するだろう。

 動作の基準としてあらかじめ回路に付加しておく電圧のようなものも人間に欲しいものだ。これを道徳というのだろう。

 6C33C-Bの音を聴いたのは製作試聴会の時だ。あの時の金田先生は、「この球の手持ちはないだろうか。面白いことにこのアンプは、ある程度のことは合わせてくれるアンプだからね、兎にも角にも音を聴かなければ・・・」といった言葉が印象的だった。
 製作記事を発表されている多くの方が、「バラつきがある。上下出力管のEpが違いすぎる場合は交換だ。」などのように結果対応だけを述べているが、問題は状況落差だ。どれほど異なれば使えないのか?が知りたいのである。問題とは結果ではなく、そこに生じる格差なのに。。。

 
 














2014.09.29
怖いshort  いよいよ裏蓋を閉めて、と思ったら少し浮いてしまう。良く見ると+160V10000μFのケミコンのネジが邪魔をしている。裏フタの黄色のところが擦れているが、今回の傷ではないと思う。ここでショートはしていないだろう。焼けた跡がないからだ。また、−側はゴムブッシュが付いていたから、擦り傷はない。
 裏蓋の13ミリの穴は、始め放熱のためかと思ったが、そうではなくケミコンが下がった場合のネジ頭を逃がすためのものなのだが、位置が合わないことからこのようなことになった。+側にもブッシュを付けて、念のため絶縁シートを貼り付けた。


 短絡によりパーツ破損の場合、部位の特定が難しいから、修理に手間取ることが多い。人間もショートすると立ち直るのに時間が掛かる。普段からショートしないように心がけよう。

   
その後の微調整
(Spice)
 
 その後、左chの6C33C-Bを吟味した。T1はドック1の時のT2をT2は前回のままとしたら、今のところ申し分ない。エージングの後も変わらないことを願う。なお、左ckの電流は球を換えたためか、200mAとなっていたので約10分後に250mAに設定しなおした。
 また、電源on時の右chは300mAを少し超えており、時間とともに250mAに落ちていった。
100KΩ間(グリッド・カソード間)の電圧
左から T1 T2 T3 T4
電圧 -48.2 -47.4 -49.2 -48.5
Io=250mA

  
 左から 1              2   3            4
選別の結果、上図のとおりとなり、製造年で統一することは難しい。4は2.3から中央のマークを無くしたもので、色々な顔を持つ6C33C-Bや6C33C達だ。「6C33C-Bは6C33Cのバージョンアップ版だが、どこが改良されたか分からない(MJ1993/4森川忠勇氏。)」

 電源onのところで、次の表の上段の数値を確認したが、今回、中段のように落ち着いたことから、下段の固定抵抗に置き換えた。結果、プレート間電圧は良いバランスとなった。
初段の選別
T1  T2 T1  T2
最終 9/27 半固定の抵抗値 Ω 11 - 7.2 -
最終U 9/29 半固定の抵抗値 Ω 9.5 - 7.2 -
最終U 9/29 固定の抵抗値 Ω 10 - 5.6 -
T1T2間のプレート電圧 V 0.25 0.18

 特別な意味は無いが、カレントミラー基板のVRは預かった時のままとしておいての調整とした。(左のVRは45Ω、右は52Ω〜としていたが、今回、下段のようになった。つまり、預かった時よりも電流を多めに流した設定ということだ。
L R
カレントミラー基板のVr値 9/27 Ω 45 52
同 9/29最終 Ω 50.3 63.6

 残るは、418A入力の発振防止抵抗150Ωを換えるか否かだ。アンプが発振器ではスピーカーは繋げない。
 スパイスは、味に変化が生まれる。おいしと感じたり、食欲が増進する。しかし、多いから良いというものではない。少しで良いのだ。
   
音を聴こう

あわせて微調整も

Now & Then
 
ファンボックスに乗せて最終エージング、2分後にスムーズに灯が入る。



SWon時 L R 参考
Io mA 310 340
オフセット電圧 mV 30 10
SWon5分後 L R 参考
Io mA 410 420
オフセット電圧 mV 20 10 Lのみ0Vに合わせる
SWon30分後 L R 参考
Io mA 200 200
オフセット電圧 mV 8 4

          電流、電力計算
(参考) d/e*1000 d*g
前V 後V 差引 使用抵抗 (左のKΩ)   mA  抵抗のmW 抵抗のW
T1 161.80 151.64 10.16 964.00 0.96 10.54 107.08 0.107
T2 161.80 151.58 10.22 964.00 0.96 10.60 108.35 0.108
TR1 16.40 10.45 5.95 220.00 0.22 27.05 160.92 0.161
TR2 161.80 152.22 9.58 910.00 0.91 10.53 100.85 0.101
TR3 161.80 152.17 9.63 910.00 0.91 10.58 101.91 0.102
TR4 -281.00 -275.00 - 6.00 910.00 0.91 - 6.59 39.56 0.040
TR5 -281.00 -275.00 - 6.00 910.00 0.91 - 6.59 39.56 0.040
※データは右ch。T1.T2の使用抵抗は、VRの抵抗値も含む。(なお、964-910=54ΩとVR値が52から54Ωに上がっているが、調整過程での変動。)

 前に418A、後ろに412Aを擁しているから、No.140よりも6C33C-Bが熱くなっている。
こうなると、カナダパール社の真空管ラジエター(今は無いか)が欲しくなる。


 今回のアンプの球の温度を計測してみた。Ioも250〜260mAと低いから上図の温度よりは低く出た。
SWから15分 LT1 LT2 RT1 RT2 参考
6C33C-B TEMP ℃ 170 155 173 160
418A TEMP ℃ 64 70 68 70
412A TEMP ℃ 90 90
オフセット電圧 mV -5 -12
Io mA 320 300
SWから30分 Ioのみ
Io mA 240 240
※6C33C-Bの温度計測の折、1本だけラジエターを付して計測したが、効果は−20〜−30℃と思われる。


 いよいよ、音を出してのエージングだ。今までは、8Ωの抵抗でエネルギーを受け止めていただけで、音の確認はしていない。
 このアンプには不釣り合いなFOSTEXの8センチスピーカーでホテル・カリフォルニアのアルバム(CD)を聴いてみた。1曲目のホテル・カリフォルニアは、その日の調子でテンポが早くも遅くも感じる難しい曲だと仲間内でもいわく付きの曲だ。
http://ph7dc.but.jp/dc_amp/141fa_ampKAIZOUnew.htm のフラットアンプを使う。
6曲目「暗黙の日々」が終わる頃には、電源on時に350mAを超えていたIoが250mAに落ち着く。


 上図資料(MJ1994/03宍戸公一氏)のとおりプレート電流安定まで15〜20分はかかる。Ioは、もう少し下がるかも知れないが、これで少し様子を見た方が良いだろう。
 この頃(2014.09.30/15:30)、AC電源の電圧は98V前後であり、時々1〜1.5V程度電圧がフワリと上昇する。同調してIoもフワリと上昇する。テスターの針がゆらりとするのはいい気がしない。
 ここでアンプも一休み。折角なので電源swを切るのではなく、1.5V乾電池で保護回路を動作させて終段の高圧電源を落とそう。落ちない。テストでは保護回路は完璧だったはず。また、クモの巣か?保護回路や検出部のチェックをしてもなんともない。たまたま、その時用いたワニ口クリップの付いたリード線がおかしいのに気づいた。短くて太い線のものなので安心していたが、クリップと線が半田付けされていなかった市販品。これを経由すると1.5Vでなくて、0.4V程度しか出ていない。そんな馬鹿な!!であり、これでは保護回路は働かないはずだ。
 この際、普段使用しているツールの再点検をすることだ。テスターの誤差もあるから、その癖も把握しておくことだ。

 以下は、MJ1993/4森川忠勇氏(要約)
「カソードの保護抵抗は、普通バイアス電圧の10%、バイアス電圧-50Vとして5Vがカソードに発生するようする。R=E/Iだから5V/0.25A=20Ω。この抵抗は電流帰還の原因となり、音質的に賛否両論。」

 金田アンプは、カソードの保護抵抗は省略しており、今回のようにRg100KΩになっても省略している。ちなみに、6C33C-Bは最大値として、Rgを200KΩを指定している。
 No.132では12KΩ、No.125では22KΩ、No.140では15KΩ、No.169では68KΩと、どんどん抵抗値が大きくなる。リスクは?
 金田先生は、MJ2001/12No.165で「出力管6C33C-B、6336B、6C19Pの場合はRgを68KΩにすると良い。」と述べている。

 6C33C-Bのヒューズが切れたと良く聞くが〜。では、どこがヒューズなのか。下図を参照あれ(MJ1993/4森川忠勇氏。)



以下は、MJ2004/4金田先生の記事から引用

 「本機(No.177)はVoの安定度と同時にアイドリング電流Ioの安定化にも配慮した.通常,スイッチオン後設定電流の半分くらいの電流からスタートして,2〜3分で設定電流に落ち着く.Ioがより安定化されれば,もっと早く設定電流に落ち着き,より早く良い音になる.
〜略〜
D5を通常のHZ6C2にしたところ,時間の経過とと もに定電流回路の出力電流が増え,Rgのドライブ電圧が負方向に増えてIoが減少した.この基板は温度上昇が大きく,Tr4,Tr5のコレクター電流が増えるからだ.ところがD5をHZ3C2に変えるとD5とTr4,Tr5の温度係数がキャンセルしあい,出力電流が増加せず,1。が安定になることが判明した.こんな簡単な方法でIoを安定化できるのだ.」


 これは、朗報だ。これ以降、No.193もNo.207もこの箇所はHZ3C2となっている。しかし、No177以前にもかかわらず、No.165はなんとHZ3C2を採用していた。
 '01.12 165 WE421AパラppDCパワーアンプ 7W(8Ω)電源部分離型 (スピーカー保護回路&オートオフセット電圧調整回路付)
 '04.04 177 WE421A、6336B DCパワーアンプ 電源分離型、3ウエイマルチアンプ対応 421A独特の音楽表現(上品、艶やか)、6336Bは応答がシャープ
 '7.07 193 WE421A,6C19P真空管DCパワーアンプ 可変ゲインアンプ採用 ソケットレスで出力管の能力を最大限に活かす
 ’10.04 207 オール5極管,パワートランスレスで超シンプル,超コストパフォーマンス 40KG6A DCパワーアンプ


 ただし、これらの記事はすべてWE421Aに関するもので、6C33C-Bに関しては、2003/06No.173を最後に製作記事は見当たらない。ちなみに本アンプ(No.173)は、HZ6C2である。

  2014.09.30


















































































































このテストには疑問があるため、なさらぬように・・・どこか考え方が違っている。








































ドックTではIoは100mA位からスタート 今回は200mAからどんどん上がり400mAを超えた辺りから下がりだし250mAに落ち着く
 
think


 
 418A入力の発振防止抵抗150Ωと定電流回路HZ3C2の2つに増えてしまった。
 さらに、出力は34Wもいらないので、Rg100KΩを68KΩとしてAを落とすことで、発振も心配なくなることを期待。
 しかし、これらのことをせずとも、現状で6C33C-Bは順調であるし、限られた期間であるが金田アンプのプリを用いる限り発振は確認していない。
  2014.10.0
 とらぬ狸の皮算用にならぬように心掛けるべきかも知れない。
 
   
    あと、気になったのは、-16Vが418Aのヒータと同一の巻線(6.3V3.6A)なのだ。この球のヒーターは6.3V0.6A×4本=2.4Aとなり、余裕が有るのだが、どうもヒーターに引っ張られられているような感じがする。WE421Aを使用した同様のパワーアンプも類似の仕様だから、心配は無いのだろうが、-16Vがふらつくのは分かるが、初段の定電流、AOCにも-16Vを使っており、パラレルレギュレータが入っているにもかかわらず-10V前後の箇所がふらつく。
   
lazy   色々と試したいことはあるが、何かをすると何かが壊れる。ある程度出来上がったものは、余程の悪さが無い限り、あまりいじらないことだと思う。それと、確認が必要だ。横着をして物事を試みると必ずと言ってよいほど結果は惨めなことになる。

   
雑感   Bendix6754/ WE412A相当管
 この球は4Kyen位するのだろうし、ましてWE412Aは倍以上か。出力管よりもレギュレータ管が高いとは驚きだ。これもネームバリューのなせる災い?ヒートアップに45secか、おおよそ1分はかかるのだ。
 こうしてみると、6C33C-Bは安くて良い真空管だと思う。ロシアのクレムリン宮殿のような出で立ちに見える。頭の角は3本と2本仕様がある。特性的には同じだが、2本角の方が後年の生産で生産方法(排気方法)が改良されているらしい。仲間内の球はすべて2本角(93/08製造)。
 以下は、Bendix6754規格表から引用  WE412Aの相当管


 6754/WE412Aの半導体代替品を依頼者から預かった。整流管から半導体整流の移行期に使用され、当然6754/WE412Aと同じピン接続なので、そのまま、6754/WE412Aと差し替えることができるらしいが、整流管のレギュレーションの悪さを逆手に取った金田アンプの設計に合わせられるのか?
 つまり、
   AC入力 無負荷  負荷時
+側 141V  199V  161V(AC比率1.14)
−側 212V  300V  280V(AC比率1.32)
というように整流管の場合、負荷の多い+側(T1.2、TR1.2で片ch42.25mA)は大幅に電圧が落ちているということだ。これを確認するためのテストはしていないし、したくないが。(パーツの耐圧はあるから、あまり気にしなくとも良いのかも?しかし、金田先生は全体の特性を考えたバランス感覚・・・航空機の設計にも通じるというから、トランスの設計も整流管にあわせている筈だ。)

 6754とWE412Aは、異なる音だというが、私はドック入りパートTの時に音を確認する程度にWE412Aを聞いたのみである。手持ちの真空管プリアンプの整流管は6754だから、これしか聴いたことがないということだ。


                 ひとまず修復完了の勇姿

  2014.10.02 
雑感U.            金田アンプのパワーアンプにおけるAOCと保護回路

 
  2014.10.03 
data追補   412Aと6754のデータがあったので、それぞれのデータシートから必要な部分を引用した。
  ・412Aのヒーター・カソード耐圧はmaxで450V
  ・6754の方はmax500Vである。
依頼者は、修理中に412Aは切れてしまったとのこと。(つまり、今回、持参された2本のうち1本は落として破損、1本はヒーター切れの様子。1949年の古い球、何とも痛ましいこと。)
あとは、ラッシュカレントが気になるところだ。
 今回は、AC141VDC161Vで1000μF、AC212VDC-280Vで470μFということで、No.145だか150だったか定かでないが、2000μFと大きい値に比して見ると負担は軽減されているといえる。(後刻メモ:No.150だった。AC80VDC±125V[私は±105Vとなる。]2200μF、AC210VDC+345V[私は306Vとなる。]1000μFをWE412Aということで、この程度の耐圧実績は問題なく、私も真空管プリアンプ何年も聴いていた。)
 No.146(製作なし)ではAC247Vを1S2711で整流してDC350Vを得ているところをWE412Aに置き換え、耐圧を気にしながら調整していたら(ヒーターが)切れてしまったというケースを聞いたことがあるが、これは耐圧オーバーと思う。
 表にまとめると次のようになる。    単位:AC/DC=V  データは記事より
DCシリーズNo. AC入力 DC出力 比率 μF 整流器
1 173 141 161 1.142 1000 WE412A
2 212 - 280 1.321 470
3 150 80 ± 125 1.563 2200 WE412A
4 ± 105 1.313
5 210 345 1.643 1000
6 306 1.457
7 146 247 350 1.417 1000 1S2711
実測値
※実測値は、No.173.150の記事データ電圧と比して異なるケースにつき記載。なお、146については製作していないのでコメントできないが、ダイオード整流だからデータのとおり規定値で出力されるだろう。

 製作上、これらのことを気にされる方は、それぞれにおいて応分の対策をすべきであり、「金田アンプ云々」ということではないだろう。
 球にとって過酷ことは、調整などで電源SW/offして直ぐに電源SW/onは避けるべきで、コヒーブレイクを人も球も十分にとってから次のアクションに移ることが大切だ。



 
  2014.10.10 
雑感V   今回のドックを通じて、初代オーナー使用あるいは調整時等に起きた事象の要因を考えてみた。(終段6C33C-Bの不調は論外として)
 ・AOC の不調により、バイアスが小さくなり、大電流が流れた。
 ・−280V定電流  〃  。
が予測され、当時の修理ノートから、
 AOC回路左CHのD1、D2、D3が揃って飛んでいた。
 保護回路制御部TR3のC3425のE・B間の導通がないこと。
 左CHのカレントミラーTR2放熱器付A1967のB・C間の挙動不審。
 ということで、AOCと−280V定電流関連がそろって壊れていた。
このことで、ほぼ6C33C-Bはゼロバイアスのためプレートは真っ赤になったのだろう。
 どうも、これらの大きな要因として、ファンボックスを使っていないことによる熱対策の不備ではないかという結論が見えるのだが。如何・・・
 今回の依頼者は、初代オーナーの2度目のトラブルに関連して、前述(2014.09.26) のとおり、「カレントミラー、定電流基板TR4.5のC4578を換えたのと、保護回路制御部のマイナス側K851をK2967に換えた。」とのことで、やはり、予測に関連する箇所ではないか。

 
  2014.10.12 
電圧メモ   気になっていた各部の電圧を修理ノートから転記する。(回路図はMJ2003/06No.173から引用)
今になって、418AのパラレルレギュレータのRD56Fのところは、92.5Vの電圧から見てどうもRD47Fが入っているのではないかと思う。
 これにて、大きな悪さは無いと思うが、何かのついでに確認しておくと良い。418Aのスクリーングリッドの耐圧は、150Vとなっている。
http://www.geocities.jp/ph7833/dc_amp/WE418A.HTM
では、59Vを掛けている。普通は、プレート電圧の半分程度までの間と聞いたことが有る。
 
 雑学
 310Aのことだがスクリーングリッドの電圧値で信じられないくらい音質が変わると聞く。一般に言われているように約85Vが、最も気に入った音質になったという。
 310A動作例(参考)
 Ep:250V Eg2(sg):135V Eg3(sup.g):0V Eg1(cnt):-2.7V Ip:5.5mA μ:1200    Rp:0.65MΩ  Gm:1.8mモー

 G1 コントロールグリッドCG
 G2 スクリーングリッドSG
 G3 サプレッサーグリッドSPG
 P  プレート
 K  カソードCathode(独 Kathode

 
  2014.10.22 
   
       
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