6C33C−B真空管パワーアンプ製作記 パート26C33C-Bバナー (C) Copyright 2001.ph7 All Rights Reserved

 何事に対してもそうだが
 出来ないと思ったことはない
 ただ、やれる時間があるか否か6C33C-B正面2台
 やる必要があるのかどうか
 一定の選択はする
 そして、自信を持つことだ
 自分に対するピクマリオン効果を
 高めることが大切だ
 そうすれば何事も可能となる
 不思議なものである
 


2台まとめて製作 
 なにせ2台の6C33C−B真空管パワーアンプを同時に製作するという能力ではなく、体力の限界?に挑戦した顛末記である。
 いつものことながらケース加工からはじまる。過去の記憶から2台の真空管ソケット受けの指定寸法の58ミリの穴あけが大変だったことを思い出した。
確か、55ミリのドリル刃(刃というより鋸を輪にしたというのが合っている。)しかなくて、あとはヤスリで削った。今回は、60ミリのドリル刃が入手できたので、これで一発、空けることができてものすごく時間短縮になった。また、少しでも大きく出来ることは放熱効果に一役買うことが出来る。欲をいえば62ミリでも行けるかもしれない。
 現用の1万円もしないボール盤では、精度もうまく出ない。モーターもうなっている。油圧のパンチがあればとも思うが、そんな贅沢もできないのが趣味の世界の悲しいところだ。なんとか、ケース加工は完了した。
基板も4枚同時進行で製作。なかなか大変、こうなるとモノーラルアンプは半分で済むから、私はモノーラルが好きだ。もちろん音が厚いことの方が好きな理由であるが・・・。

調整プロセス
 基板が完成したので、MJ95.12、P67の図21による調整に入るが、変だ、正常の動作をしない。片chの基板だけを載せてのことだからかとも思ったが、それは無いだろう。両方いっぺんに組込んで調整するのも良いが、2枚とも飛んだら元も子もなくなるとの、誠に信頼関係のかけらもない私と、基板の間柄である。もう少し自分の腕を信用すればこんなことも無いのだが・・・。いずれにしても電源SWを入れるときはいつもながら緊張する。煙は、熱は、火花は、異常音は、テスターによる電圧監視ポイントなど、一瞬に全ての感覚をフルに使い、更に第6の感(センス)をも使うのかも知れない。全身全霊を傾けるとはこのことだ。
 このようなときには、先ほど左chに取り付けた1枚目の基板を右chに移し替えて、2枚目の基板を左chに取り付ける。こうすると原因は基板かそれとも基板外かが分かるというものだ。結果は、右chに移し替えた基板は正常に動作するので、さっきの異常は何だったのか。そして、左chに取り付けた新たな基板がおかしいのである。左chになにかが潜んでいるかとも思ったが、こんな時には別なことに気持ちをシフトするのが一番である。このまま続けていると経験則から2次災害が必ず起こる。この日は、晴天成り。いままで天候が悪くて延び延びになっていた梅干の土用干しをする。時期がずれているが、北海道はこんなもんだ。
 まてよ、ツェナーRD47Fは以前にショートした基板から移行したものだから、それかな?とも思ったが、事前にチェックしたはずだ。そんは筈はない。(古い基板もなかなか、処分できずにいて、いつかはパーツ取りにでもと思うのは、私だけか?)

新種の半田
 先ほどの1枚目の基板は左から右に移したときにしたことは、電源のケーブル3本を外し、また取り付けただけである。その作業で考えられること。→「取替え時の熱で附近のパーツのしっかりと半田付けされていない部分が密着したかも・・・。」そうだ、今回から半田は、和光テクニカルの銀入(SR−4N)のものを使うが、今までの金田明彦先生指定のものより融点が少し高いためか、材質のせいか表面がキラッと光らず、いぶし銀といったところだ。こんなところもトラブルの元なのかと自己嫌悪に陥る。しかるに、半田が指定の物でなければ金田式DCアンプでは無くなるのかとも思い更に自己嫌悪状態だ。
[テクニカルサンヨーのおじちゃんの話、基板にこの半田を使ったら後から外すときに大変な目に遇いまっせ。スピーカー端子へのダイエイ電線30芯の配線とか、ジャックへモガミ2497を配線する程度に使うのが良いでっせ・・・(私は今回、全てにこの半田を使ってみた。コテもワット数の有るものでないと駄目とか色々といわれていたが、金田明彦先生推奨の25Wで十分だ。今回の製作のために買った100gの半田は残りわずかだ。これなら1Kgのものを買っておくべきだったのにと後悔。音はどんなことになるのか。期待、期待ナリ。)]
 <そういえば、銅入半田(SR−4N_cu)は如何なものか。使ってみたい。>
 話をもどして、熱が伝わってパーツが・・・となると1.8KΩの抵抗しかない。ここに電圧がかからなければ、動作はおかしくなるのは当然である。なんなく2枚目の基板もしっかりと半田を載せて正常動作となった。
 なお、仮に付ける15KΩの抵抗は、スケルトン抵抗でなければと思い込んでいるが、別に進の抵抗でも何でも支障はない訳で、1.2作目はあの大きなスケルトン抵抗を取り付けたものだが、今回は、既に真空管ソケットに付けてしまっていたので、進の抵抗とした。
 VR1を回して、電圧が0Vになる事を確認して、TR7のドレインとアース間の電圧を測る。VR2によるの電流調整はスムーズにいったのはいうまでもない。
 テスターのレンジは250Vで50〜65Vの範囲で10V程度可変する。つまり、50〜60Vだったり55V〜65Vだったりする。ここまでくれば、完璧に動作すると思って良い。やり残したバイアス電圧を測る。ただし、まだ真空管は挿さない。

真空管No バイアス電圧
 1     60V
 2     59
 3     59
 4     59
   5V程度の差なら良いとしているので、全く問題がない。この測定は、通電して1分程経過してから測定すること。(MJ94.12 P63)

調整の次のステップ
 いよいよ真空管とタイマーSWを挿す。タイマーは30秒でも良いが、金田明彦先生指定の1分で十分良い。私は、2分間に設定するのが、待てる限界と思うし、少しでも長くヒーターを暖めておくのに問題はないし、そのほうが安定するからだ。なお、プレートに電圧を印加してから電流が安定するには、15分はかかるからその後にVR2の調整をした方が良い。
 我が家では、商用電源電圧が93〜98Vと変動する。他の地域も同様なのだろうか。
 まずは、電流値を250mAに設定する。始めから無理はしないからだ。また、電源電圧がもう少し高くなることも予想されるからこの程度で暫く様子を見て、300mAまで上げて行く。

真空管No 電流値を250mA 電流値を300mA ロシア技術者推奨方法時Ep
 1       51.9       49.4V      138.2V
 2       53.5       49.9       138.6
 3       52.8       50.6       139.2
 4       54.8       51.2       139.9
 結果としては、300mAに設定した。
 この時のAC電圧は97.5〜98Vであり、
 高圧部 −273V、
 低圧部 +44.5V、
 終段部 ±149Vという状況下のことである。
VR2の目盛りも次のような状態となり、右左で誤差はあるものの50mA上昇させるに要する抵抗値は12.5Ω(2.5目盛)である。

    250mA 300mA
右ch 4.0  → 6.5
左   6.0  → 8.5

テスターの信頼性
 ところで、この電流値の測定方法だが、当初はアナログテスターをシリーズに入れて測定していた。途中から気付いたことだが、2台のテスターには、かなりの誤差があり使用に耐えないことが分かった。
(たまたま、左右を入替えたら数値が相当異なるところから、判明したものであり測定機は安いものは駄目である。また、アナログの良さも痛感するときがある。あのファージーさが何とも言えない。デジタルだとどうしても数値を合せようと躍起になる。)
 いつも思うのは、電流値の測定はなかなか大変だと思う。被測定回路がそのままでは測定出来ず、シリーズに測定器を挿入するか、抵抗を挿入して端子間電圧から換算する等である。
 手持ちの1mA電流計に0.15Ωの抵抗を抱かせて1Aの電流計にしてみたりしたが、どうも精度の点で不満が有り、しかも2個用意できないということもあって、最終的には、デジタルテスター2台で抵抗10Ω(精度J.5W型〜結構熱を持つこと)間の電圧を計測する方法とした。これで3Vと出れば300mA流れているということになる。

スピーカー保護回路
 今回の作業中に、MJ2001.9月号が発売された。いつものことだが、プリかパワーか、球かUHCか、などと思いを巡らせるのである。おおっ!、スピーカーの金田式保護回路だ。2SK851は手元にあるし、他のパーツも問題ない。さて、取り掛かろうとしたときにパーツボックスにCMOSの4011が無いことが判明。残念、パーツを注文し、届くまで待つことする。
 この保護回路は、画期的であると私は思う。今までに他の著者が発表されているものは、リレーによるものしか見た記憶がないからだ。こうなれば、以前からオフセット自動調整回路も要望していたが、半導体アンプに関しては不要かとも思う。あとは、真空管プリアンプに、球のドリフトを追従するオフセット自動調整機能が必要なだけである。さもなければ、真空管プリと真空管パワーのダブルドリフトで保護回路が作動しかねない。このことを考えると、真空管パワーにはスピーカー保護回路は入れないとするのが良いのか?。真空管プリと真空管パワーの2台ともマイナス側あるいは、プラス側の何れかに仲良くオフセット電圧が出ていると、600mV位は軽く超える。従って、双方のアンプを繋いでおいて、双方のオフセット電圧調整を行うと何がなんだかわからなくなる。真空管アンプの場合は、パワーを一度合わせたらそのままにしている。たまには、入力にショートプラグを入れて調整すればよい。半導体アンプでは、プリを一度合わせたら、まず手をかけることは無い。
 なお、保護回路の試作レポートは別項を参照のこと。

放熱が問題
 話が、それたが、6C33C−B真空管パワーアンプは放熱対策をどうするかということが最大の問題である。パール社のラジェターも入手不可と聞く。残るは空冷しかないとのことからACファンを取り付けてみる。真空管の側面裏側から冷却するも真空管ソケットが熱くなり、それがケースに伝達するため使用開始から30分で相当熱くなる。この真空管は、300度までの耐性はあるのだろうが、寿命の点からも熱くしないに越したことはない。今度は、下から真空管ソケットめがけて送風する方法としたら、相当の効果が期待できた。きちんとしたケースを作り風の洩れを防ぐ構造にすると更に効果があるだろう。ここで、一つ困ったことが起きたのだが、冷却により基板上の素子も当然冷えるため、2SK30Aの設定が変化し、当初±10mV程度のオフセット電圧が、−250〜300mVまでアップしてしまう。それは、2SK30Aに息を吹きかけるだけで50〜100mVもドリフトするのだから、・・・仕方ない。ファンを切ると見る見る温度は上がり、オフセット電圧は下がって調整値に戻る。
まあ、許容範囲であるから気にしなくとも良いといえばそのとおりだが、調整不能でそうなるのとは違い冷却度合に合せれば良いことだから、なんとかしたいと思う。しかし、今回はVR1は裏側からしか調整できないようにしたため、ファンが邪魔になって調整が難しい。残るは、基板のスペースと真空管ソケットのスペースを隔離することだと思うが、今後の実験となるだろう。
 今回のアンプケースの両サイドのパネルに20ミリの通気孔を2つ空けたが、ここから、ファンの送風が洩れている。洩れというのが良いのか、熱い空気を逃がしているというのが正しいのか、効果か逆効果かいまのところ不明であるが、真空管ソケットとケースの間は10ミリの段差を付けてあるが、この隙間から熱い空気を排気するのは限度があるから、サイドの通気孔から逃がした方が良いのか、真空管ソケットを冷却した空気を更に隙間からどんどんと排気させ、その空気が真空管を冷却するのが効果あるのか、これからの実験による。

2台目のアンプは?
 いままでのことは、今回製作1台目のアンプ(通算3台目)のこと。次は2台目のアンプ(通算4台目)のことであるが、

真空管No 電流値を250mA 電流値を300mA ロシア技術者推奨方法時Ep
 1      52.5        51.9V      137.7V
 2      52.8        52.1       138.0
 3      52.9        52.2       140.0
 4      54.3        53.5       140.4
 結果としては、300mAに設定した。
 この時のAC電圧は97.5〜98Vであり、
 高圧部 −274V、
 低圧部 +44.7V、
 終段部 ±148.5Vという状況下のことである。

VR2の目盛りも次のような状態となった。

    250mA 300mA
右ch  2.5  → 5.0
左ch  2.3  → 4.8

 商用電源によるドリフト
 商用電源が1V上がると、バイアス電圧が下がりIpが10数mA増加する。そのようなことから、先日AC電圧94V時に260mAで設定したものが、AC電圧98V時には最大350mAまで流れた。電圧変動は日常的なことだから仕方ないが、しかるに設定をいくらにするのかということだ。私はAC電圧98Vで300mAの設定とした。

 2台目のアンプは、底板をつけずに下から真空管ソケットめがけて送風する方法としたら、相当強力とみえてオフセット電圧が、±20mV以内のものが−600mV(1台目の値の2倍)をオーバーする状況となった。これでは、折角付けようとしているスピーカー保護回路が作動してしまう。やはり、冷却度合に合せたVR1の調整が必要になる。

 ここで、気付かれた方もいると思うが、真空管No1〜4についてはバイアス電圧の順に並べてある。その方があとから混乱しないからだ。さらに、これはロシアの技術者推奨方法によりエージングしたときにプレートに掛かった電圧(Ep)の順に並べたものだが、それが、真空管のバランス取りにも役立っている。

 さて、バイアス電圧のばらつきについて気になるところかと思うので、以下に例示するが、かなりばらついているが。実用上差し支えがあるという程ではないと宍戸公一氏の記事(MJ94.3 P119)である。
 真空管No 電流値を145mA(プレート電圧は225V)
  1      85.0     
  2      78.5     
  3      84.3     
  4      76.5     
 どうしても心理的に落ち着かない方は、1.3と2.4の組合わせとする。」とあるが、そうしたくなるのは当然でありそれが心情というものだ。
 これから見ると、今回の2台のアンプに使用した真空管は相当のレベルでバランスが取れていると考えられる。約30本の中からペア取りしたので当たり前といえばそうである。また、2SK30Aや2SJ74Vのペア取りも相当念を入れたので、ドリフトも少ない。今までで快心の出来と思っている。

 やれやれ、今日は台風11号も通過してか蒸し暑い夕方だ。18時頃、アンプの経過観察のため電源電圧をみると、よくもまあ商用電源はドリフトするものだ、追従してプレート電流も変化する。
 電圧    プレート電流  ±電圧(Ep)
 96 V   260mA     −
 96.5    −       145.3
 97     270       −
 97.5   280      146.7
 98     290       −
 98.5   300      148.0
 (当然だが、AC1V上昇すると、DC1.3〜1.4V上昇する。)

素子
 音が良いといわれている整流ダイオードが、廃品種で市場から姿を消した。良いといわれるとすぐに値上がりはするし、隠されてしまうし散々である。最近、UHC2に取って代わった2SK2554も同様だ。つい先日まで、800円であったものが2000円弱の値が付いている。元は一体いくらなんだ。
GBPC2504ブリッジ GBPC2504、ブリッジはこれが金田アンプ御用達だ。しかし、今回はBR154を使用した。

まとめ
 真空管のアンプは、昔から苦手であったが、金田式DCアンプシリーズの真空管プリに出会い・その圧倒的な表現力に魅せられ・製作に手を染めてからは、苦手な真空管も高圧300V程度までならなんとかできるという気持ちが出てきた。そして、その次の真空管アンプは、この6C33C−Bパワーアンプであった。数年前の金田明彦先生の製作会において、特別のトラブルもなく完成し、自信を高めることになったと思っている。
 2台目もそうである筈(ノン・トラブル)だったが、調整中に無精して、調整ケーブルを引っ掛けて片chの基板と高圧がショートして、ダイオードが飛んで他の部位にも影響を与えた。こういうときは、何かしら危ないなあー、と予感するものだから、その時にその行為を中断すれば良いのだが・・・。
 ついては、予想されるところを順に取替えたが復活せず、今は先述のとおりパーツ取りにしているが、どれが飛んでるパーツか分からないので、もう手を出さない方が良いと思っている。その基板に代えて新たに作り直したことで問題なく動作している。
 その後の製作は、WE310Aのモノーラルプリである。これもまた、味わいのあるアンプであり、形がアンティークでなんとも言えない。音も好きなタイプで厚みがある。廉価版として6C6で代用していた時期もあったが、この球もまた、古典に属するものだと思うが、良く鳴ってくれる。真空管ラジオのリバイバルで、いまでも並三・並四ラジオキットに採用されているが、時代を超越した球と感じる。
 今回、6C33C−B真空管パワーアンプを2台まとめての製作であり、真空管アンプの勘所が少し分かったような気がする。
 一度、WE300Bも手掛けてみたいとも思うが、球の高いのには閉口する。さりとて、中国球では真価が発揮できないと思うし、まあ、定年後にでも考えることとする。しかし、OTLアンプのしかもこれほど安定しているアンプを目の当たりにして、いまさら出力トランスに数万円×2もかけてWE300Bを聴きたいのか本当のところは、分からないのである。どうも、WEの名前が一人歩きをしてはいまいか。

完成ヒャリング
 完成したアンプはN氏とK氏のものだ。毎度のことながらアンプのヒャリングテストを行った。→N氏宅 K氏宅


6C33C-B基板 6C33C-B基板


銀入ハンダ(SR−4N)
 フェノール基板に銀ハンダは食い合わせが悪いというか、銀とOH基で化学反応が起きてやがてショートしたりするらしいとの話を聞いたことがある。・・・らしいでは困るのであるが、AT-1で作る金田アンプにはだめだということか。いずれにしても、今回のアンプの基板からすべてこのハンダだから、1年間隔くらいで結果をレポートする。乞うご期待・・・。(2002.08.04)

2018.09.20
KAZU宅の2018.09.06の地震被害の折に15年以上経過の基板を点検したが上のような懸念は皆無 かなり遅れてのレポートだがご容赦 なかなか基板を点検する機会がなくて失礼していた


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2001.08.23 1版
2002.08.04 銀入ハンダ(SR−4N)