No.145 EF86ステレオ真空管DCプリアンプ製作記 EF86球アンプのバナー (C) Copyright 2001.ph7 All Rights Reserved

EF86真空管プりアンプ写真

  音が出た瞬間
  そう
  この音
  スピーカーも納得
  これほどの心地好さは体験したことがない
  世界に誇る金田式DCアンプだから・・・
  こうなる

                                           

真空管のすすめ
 金田明彦先生の真空管のステレオ・プリアンプを初めて聴いたのは第1回目の試聴会(94.5)の時だった。これからは真空管でなければならないと云うのをその時感じた。その意味では試聴会は大変意義のあることだ。半導体にはどうしても出せない質感が真空管にはある。あれほど接点の多い素子なのに何故という疑問もあるので、そのうち足を半田付けしなければならないのか?取り敢えず接点プロは塗布してあるのだが・・・。
 そうそう、熱くならなければ良い音は出ないと誰かが云っていた。
 
製作試聴会
 事もあろうに真空管ステレオ・プリアンプ(No.132)の製作会を企画し、素人の集団が製作をした。と云うよりプラモデル作りの感覚だ。私の完成品を真ん中に置いて、あちこちのケーブルやら素子の間に太い指を入れ曲げたり戻したり。あれで大分アンプも疲労したと思う。2511ケーブルも切れかけた。果たして完成はしたもののヒーターはバッテリー、乾電池80本による120Vを用意することの大変さから、せっかく製作した仲間達のアンプは飾り物となっている。あの製作会の時、1度しか聴いていないと嘆くのである。やはり、トランス式にしなければと云っていたのも束の間、金田明彦先生はトランス式を発表されたのに、皆は多忙すぎて製作時間が取れないとかで、そのままとなっている。01年1月になってようやく腰を上げようとしている。
一昔まえの話だ。(現代では5年を一昔と云う。)
 その製作視聴会での出来事だ。私のアンプが発振した。金田明彦先生、即座に抵抗の定数を変更した。3本の抵抗を変えると発振は止まった。まさに、神業である。
  「之を知るを之を知るとなし知らざるを知らずとなせ是れを知るなり」
                        論語(為政編より)

バージョンアップの連続だ
 仲間が皆、浦島太郎になっているうちに金田明彦先生は、完全対称(No.141)トランス式のWE420A・5755スタンダード(No.145)、左の基盤分割化(No.150)、ECC81の低電圧型(No.157)とどんどんと進化していく。私は、ようやく追い付いているが、トランス式のWE420A・5755スタンダードが安定している。ECC81の低電圧型は、ドリフトが少し気になる。
 No.141からシリーズレギュレータは球になった。しかも横付けである。私たちはこれを称して、横金球アンプと呼んだ。金田明彦先生は、苦笑した。

真空管の音
 真空管プリはFAにECC81(No.157)を使ったものと、その前の前のFAに420A(No.145)を使ったものとの2台を使い分けている。私の耳には後者がキリッとした音で低域にも締まりがあり良く聞える。これは、ECC81.82等の球の音の違いかも知れないが、420Aの代品5755が安物といって馬鹿には出来ないと思っている。*ムラードの音の本質が柔らかいのかとも思うが経験不足。
 以下に、現用プリの使用球を参考まで
(*ムラード(英国フィリップス) 英国フィリップスとして成り立っている企業である。したがってムラード・ブランドとしては、英国製以外にフィリップス本国オランダ製も混ざっている。)
No.157


コメント
  フラットアンプ初段   出力段    
    ↓           ↓
ECC81ムラード   ECC82ムラード 

イコライザーをムラードにして同一メーカーに統一する考え。イコライザーは現在EF86(AEGロシア製)
No.145


コメント
  フラットアンプ初段   出力段    
    ↓           ↓
5755         ECC82Ei(ユーゴ製)    

イコライザーは現在EF86(GAロシア製)、DC電圧変動は、No.145の方が安定している。

 パワーアンプは、6C33C−B(No.140)を使っている。このアンプの2号機も完成した。△氏に頂いたトランス(テクニカルサンヨー製で少しねじれていたもの。)を使い作って、試聴用として仲間(N、Y、K氏)に貸し出しているが、N氏の処で止っている。目から鱗が何枚も・・・と話している。彼の耳は天下一品、保証期限内である。
 この貸出用のアンプは2SJ72でなくて2SJ74、高圧のダイオードも1S2711ではなく代替のERD09−15となっている。UHCの音はまだ聴いたことがないが、パワーは6C33C−Bの他に考えられないと思い込んでいるので、UHCをまだ作ってはいないが・・・。
 なお、皆の作った球のプリもNo.145に改造する計画。(2000.springの時点のこと)

電源について
 最近の製作記事で大変嬉しいのは、トランス(電源)が共通して使えることで、お金のないアマチュアにとっては、大変助かると思われる。00年6月のプリメインのプリ部はFETの究極のものと考えられるので、食指が動く。TRによるパワーは熱暴走等対策に若干難しさがあるものの廉価にまとめられるので、さらなる改善を期待している。
(別に述べるが、私は家庭のAC電源を信用していない。TRパワーアンプはバッテリー駆動しかしないと決めている。オシロでそのままの波形を見たが、見なければ良かった。ピークが潰れている)

 このアンプには、信濃電気のHSR-510のような安定器が必要だ。さもないと、ハムが入ってしまう。ただし、我が家と友人2名宅での実験の結果(2001.03)だが、他にも当てはまるとしたら・・・、このアンプの100V、105Vの2段レギュレーターの効果が無いことになる。なお、この実験は、とある日真空管プリの音の凄さをと、友人宅に持ち込んだのは良かったのだが、ハムが出て止まらない。ではと、2人目宅へ行くも同様。ははー、電源だと思いHSR-510を持ち込みハムが止まった経過がある。では、それまでは自宅でどうしていたのか。なんのことはない、いつもHSR-510からのきれいな電源のお世話になっていたことを忘れていたのだ。

さらなる期待
 真空管プリのオートトラックレギュレータのようにフラットアンプ部の作動アンプもオートになる時が来ると思う。そうなると、完璧に音楽に没頭できる。


 これは、製作記だから、もっと詳細なレポートも必要かと考えたが、MJの記事のとおりで、何等トラブルはないので、安心して製作できる真空管アンプと思う。以下は思いつくままに。

ph7の独り言
1 シャーシーによる分離型(No.145)のままで使っている。アルミアングル化のリニュアルは予定なし。今の方が真空管アンプらしいと思うが、音が劇的に違えば別であるが、まだ実験する機会がない。

2 電源について言及すれば、私は100Vの安定化装置を使っている。

3 EF86をフラットアンプの作動部に使うには余程特性の合ったものでないと時間とともにズレていく。やはり5755が良い(音・安定・価格)と思うが、そのうちWE420Aに変えたい。5755のレイセオン製はウエスタンに次いで音が緊密で彫りが深い音が出る。

4 EF86は、レギュレーターとイコライザー用にしか考えていない。

5 今は、イコライザーがオートトラックレギュレーターで安定しているが、付加していない方は、測定穴に真空管の絶縁ブッシュをはめ、テスター棒でSEコンの端子にタッチし、T2の信号を乗せている60Vを監視する。60Vもそれなりに動くので要監視。

6 真空管プリに限って、私はDC監視メーターを常時付加している。儀式のうちのひとつになった。このメーターは音には影響がないと判断しているので、興味のある方はお試し有れ。

7 金田明彦先生の凄いところは、ロータリーSWとスケルトン抵抗で作るゲインコントロールVR操作時にDCが出ていれば切替時に出る音の大小で、DCレベルを察知しテスター無しでフラットアンプのVR調整をしてしまうところだ。これは見習いたい。

8 このプリに限らないが、真空管は柔らかいと云うイメージをお持ちの方が多いが、逆である。ぎちっと絞っていて堅めの音と思った方が良い。日本酒で云えば芳醇辛口だ。端麗辛口ではないと思う。

9 真空管プリ(No.157)は、私の使った球の性格が柔らかいのか。英国のイメージからもきりっとしているかと思ったが反対だった。ムラードは音の分解能がやや甘い傾向がある。

10 真空管プリ(No.157)は、電源のタイマーも不要、整流管とケミコンも1つ減っていてローコストとなっている。私の場合、ECC81の良い球に巡りあっていないのか、DCが一定しない。SWを入れて暫くして調整用VRを微調整するという具合だ。球アンプはこれ位の手間は当然か。
ところで、皆さんはプリFAのDCの限度はMAX○○mV?いくらまでなら容認しますか。
 私は、10mVとしています。

11 FETのペア測定等の専用アクセサリー、写真の様なシンプルなもの。結構活躍している。今はあまり使われないが、作動アンプ初段の定電流用には4mAの2N5465が必要だが、通常はそれを越える。その調整Rsも一緒に測定出来て便利。金田明彦先生も随分と汚い物だが一体何だろうと怪訝な顔付きで見つめていたっけ。確かにバラックで汚い代物だ。

12 パーツリスト追加(2001.07.20)
  No.145と150のミックス型となっているが、要は良いところをあわせたものとなった。


電源部
EF86真空管プりアンプ電源部写真


No.145、150トランス回路図 この外にヒーター回路がある

No.145、150電源トランス回路整流管方式

No.145とNo.150は同一のトランスだが、No.145はオールダイオード。No.150は高圧の±112Vと+315Vは整流管。
図面が大きくなるので、+315VをIS2711としているが、実際は整流管だ。
これを全部SBDに取り替える予定だ。



AOC化 (2003.07.23)
AOC基板追加半固定VRは見たとおり指定外のもの
この後にλ-13Tに交換してある。



AOC化回路図 2003.08.09
AOC基板追加回路図
2SC4578の損失が大きく結構発熱する。
記述の無いパーツは、指定どおりのものとした。?kΩは300kΩとする。ここは1mAも流れれば良い。


空中配線の様子 
AOC化により半固定VR200Ωは不要となるが、そのままとしてある。
145プリの配線の様子
WE420A(5755)、ECC82周りの空中配線、お見せするようなものでは無いが、あとから改造時には写真確認も必要になるから自分のために・・・(そういえば、それがこのHPの原点だった。)



ハム対策 2003.11.01
 ハムを止めなければ・・・このアンプは、トランスタップがAC80Vのみで、最近のようにAC100Vがない。このため、レギュレータの電圧を既定の+105V、+100Vというわけには行かず+95V、+90Vの限界まで落とすことが回避策と金田明彦先生はアドバイスされる。我が家の商用電源の電圧が低いこともあって深刻な問題だ。
 しかし、ハムは止まらない。
 それではと・・・、EQアンプの+105Vを乾電池で供給するが、これでも止まらない。これは、別のところに原因がありそうだ。(このときの実験では、+100Vのレギュレーター1段に+105Vの電池による。)では、レギュレーターを通さずに直にしたらどうなるのかは、未了である。
 いっそのこと、FA部をWE420A(5755)タイプから、ECC81にする方法もあるが、これでは解決法にならない。

ハム対策2 2003.11.22
 白プリと呼んでいるno.145の真空管プリアンプのac回り込みによるハムは依然として解消しない。最後の手段かと思い重い腰を上げた。105Vレギュレータのヒーターをac点火でなくてDCにしよう。早速、LM317Tによる6.3Vのヒーター用レギュレータを取り付けた。(下図写真)いつものようにウーファー用のパワーアンプ6C33C−Bのみ立上げダブルにしてある416−8Aから出るハムに耳を・・・どうだろう、ハムはだいぶ軽減された。音が出てしまえばなんとかなる程度だ。しかし、パワーアンプのスピーカー端子に繋いでいるテスターの500mVレンジの表示では、針がふらりふらりと安定しない。100から150mVもふらつく。これでは音楽は聴けない。どうしてもAC安定化電源の世話にならなければならないようだ。
 今度は、その安定化電源を通した。さすがだと頷いた。いままではそれなりの真空管プリアンプ特有のノイズはあったものが、さっぱりと消えた。これは、105VレギュレータのヒーターをDC点火にしたことによるものだ。まあ、ひとつは前進したのだから、これで良いとは考えないが、後の楽しみに残しておこう。ひとつくらい解消しない難題があっても良いだろう。しかし、きっと解消策は簡単なことなんだろうと思うのだが、考えが浮かばない。きっと電力会社が悪いのだと片付けておこう。なお、ここで採用したLM317Tによる6.3Vのヒーター用レギュレータは、添付されていた解説書のとおりとしてある。結果、金田明彦先生の回路定数の半分の抵抗値である。また、高価なV2Aも使用しないで、サービスで添付されていた1μFと0.1μFのセラミックコンデンサーを入出力に付けた。

白プリLM317T付加


145EF86PRI



ハム(ノイズ)について 2004.01.06
 アンプが増えるにつれて、電源を対で揃えることの無駄とは云わないまでも効率の悪さはいわずもがな・・・。そんなこんなで、我がアンプ群はと云うとハム(ノイズ)に悩まされている。真空管プリアンプである。特に我が家は商用電源が96V程度で推移していることが多く、NO.145・150のトランスでは高圧のAC80Vを整流した場合、整流管では105Vも出るだろうか。仕方なくダイオードにしても110V程度であり。さらに+側は105V・100Vのレギュレーターに喰われて、数ボルト低下するのだ。
 NO.145・150の真空管プリアンプのハム(ノイズ)を追いかけて、暫く経つが色々と試すもいっこうに解決しない。こんなにも楽しみを継続させてくれるアンプ(電源)も珍しい。大半は、1〜2回のトライで問題解決し、音楽を楽しめる状態になるのである。
 最近、前述のとおり電源を共有することをしなければ、と考えて手持ちの電源を探したら、NO.154の真空管モノーラルプリアンプに使用したオリジナルではないが、金田明彦先生が発注されたトランスを登載している電源が使えるはずであることに気付いた。これもAC80Vを整流し、使用しているがAC安定化装置を通さないと使用できなかったはずである。このトランスを良く見るとAC113Vの中間タップ付きもあるではないか。ヒーター用としては10Vのみがあり、整流するとなんとかWE310Aの10Vヒーターにも使える。(というか、使っている。)無精をして、この電源をNO.157の真空管プリアンプに繋ぐもやはりハム(ノイズ)はおさまらない。
 それでは、とAC113Vを整流してプリアンプに繋ぐ。ハム(ノイズ)は低音用の416−8Aから、ブーンとうなるのであるが、この症状が見事におさまった。このときのレギュレータの電圧は100Vと95Vに設定したままである。(金田明彦先生の説では95Vと90Vが限界とのこと。)
 なお、レギュレータ用に使用しているWE404Aではマイクロフォニックノイズが多く、ゲインVRつまみに触る程度でピィーン(キィーン)と唸り実用にならないため、アンペックス5847Aに替えておさまった。この時は、まずアンプ内の球を替えたが、完全にはマイクロフォニックノイズが取れないため、電源内の球も替えた経過がある。
 本来、105V用のレギュレータには一体、何ボルトかけるとリップルを除去し正常に動作するものなのか?(これは我が家での出来事であり、他では分らない。)どうも、125V程度なければ、リップルを除去出来ないように思う。とすれば、不足する電圧を別のトランスで継ぎ足しても問題は解消するのかというと、実験では無理であった。
1つ目は汎用トランスで15Vを2回路持つものと、2つ目はRコアトランス25Vを2回路持つものである。汎用トランスは論外であり、磁束洩れ特有のハムだ。Rコアには期待をしたものの残念である。プリアンプには、特にイコライザー部には小手先でのまやかしは通用しなかった。
 まさか、レギュレータを3段にするのは大げさすぎる。でも、実験だけはしてみたい。ものを作り新たなアイデアを生み出す人間本来の本能は大事なことだ。
 せっかくのNO.145・150の電源トランスを活かす方法は、今後も続けたいがそろそろあきらめて、AC安定化装置を通して使用しなければ、AC安定化装置が埃をかぶる。いずれかを選択するかは、まだ先になりそうである。
 また、実際にNO.145・150のアンプを製作して日夜音楽を楽しんでいる輩もおられると思うが、その方たちはこのようなトラブルはないのだろう。私にしてみれば、何と幸せなことか?1粒で3度美味しいのだから・・・。しかし、これがために最近は新たなアンプ製作に裂く時間が不足しているのも1つの要因だが、メンテナンスに時間をかけて楽しみを増幅させるのも大切なことではないか。

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2001.03.23 1版
2001.04.07 最新update
2001.07.20 パーツリスト追加
2002.04.19 トランス回路追加

2003.07.23 AOC化
2003.11.22 ハム対策