
ビートルズの解散とともに幕を閉じた60年代であったが、その陰で着々と力をつけ、70年代に入って大ブレイクを果たしたアーティストも数多く存在する。今回紹介するレッド・ツェッペリンはその代表格であろう。
のちに“三大ギタリスト(エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジ)輩出したバンド”として脚光を浴びるヤードバーズであるが、ジミー・ペイジが在籍した末期(代表作「リトル・ゲームズ」)は実権をほとんど彼が握っていた。
新たなる音楽性を追求するのにとても熱心な彼は、バンドをニューメンバーに切り替え再出発することを決意、ロバート・プラント(ヴォーカル)、ジョン・ボーナム(ドラムス)、ジョン・ポール・ジョーンズ(ベース&キーボード)のラインナップで“レッド・ツェッペリン”としてスタートする。
ヤードバーズの初代ギタリストがジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズに在籍していたエリック・クラプトンだった事もあり、ブルース色の濃いロックン・ロールがバンドの身上であったが、ジミー・ペイジは従来より興味のあったフォークをうまく融合させようとしていた。その成果はファースト・アルバム「レッド・ツェッペリン」に収録の「ベイブ・アイム・ゴナ・リーヴ・ユー」にはっきりとあらわれている。
“ヘヴィ・メタルの元祖”的とらえ方が昨今では一般的だが、初期の「レッド・ツェッペリンU」「レッド・ツェッペリンV」あたりではまだはっきりとした方向性が定まってなかったように感じられる。「U」では「胸いっぱいの愛を」「ハーブレイカー」に代表されるミディアム・テンポのヘヴィ・ロックのイメージがあり、「V」は「移民の歌」に代表される混沌としたフォークっぽさが前面に出ており当時“問題作”と騒がれた。
方向性が定まり、かつバラエティに富んだ作品群、しかし、一曲一曲が明確なコンセプトによって構成されているのはやはり「レッド・ツェッペリンW」であろう。「ブラック・ドック」「ロックン・ロール」に代表されるアップ・テンポのヘヴィ・ロック、そして何といっても極めつけはスロー・ナンバーの名曲「天国への階段」である。まるでこの曲を演奏したいが為にレッド・ツェッペリンを結成したのではないかと思えるほどジミー・ペイジの描いていた理想像が凝縮されているのではないか?そう思えてならない。現在に至ってもなお彼ら一番の代表曲となっているのは当然であろう。
その後は「聖なる館」「フィジカル・グラフティ」と新たな展開を見せ、「プレゼンス」ではヘヴィかつパワフルにドライブするこれにもなかったほどのパワーを見せつけてくれた。特に10分を超える大作「アキレス最後の戦い」は圧巻である。しかしそれは実のところ“ツェッペリン最後の戦い”でもあったのか?
次作にライブ・アルバム「永遠の詩」(同名映画のサントラ)を発表した後、3年ものブランクを経てリリースされた「イン・スルー・ジ・アウト・ドア」は従来とはまったく異なった作品群で埋め尽くされている。キーボードが全面に押し出されており、ジョン・ポール・ジョーンズ主導で制作されたのは一目瞭然である。
果たしてその後どのような方向へ進むか、ファンが期待と不安、いや次作に対する期待のほうが大きかったであろう翌年、バンドの終焉をジョン・ボーナムの急死という形であっけなく迎えてしまった。1980年9月の事である。
70年初頭にビートルズを抜いてトップに立ち、70年代の終わりと共に散った巨大な飛行船は解散から19年経った今でも飛んでいるような気がしてならない。
(中野 亮)