ナッキーのこれだけは聴こう!

Eagles


 1977(昭和52年)の前半、あるひとつの曲が有線で幾度となくオンエアされていた。イントロからエンディングまで泣きっぱなしのギターと悲壮感漂うヴォーカル・・・人生の“陰”の部分が凝縮されている「ホテル・カリフォルニア」に特別な想いを抱いているのは私だけではないであろう。
 もともとイーグルスは「テイク・イット・イージー」に代表されるように爽やかなL.A.の風を運んでくれる“陽”のバンドだったのだ。それが何故“陰”を前面に押し出すようになってしまったのか・・・・。
 その前兆は前作「呪われた夜」からであった。重々しいイントロから始まるタイトル曲がそのまま「ホテル・カリフォルニア」を呪ってしまったかのようである。しかし、「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」「いつわりの瞳」といった心温まるバラード・ナンバーも含まれていたので次作に暗い影を落とすとは予想だにしなかった。
 リンダ・ロンシュタットのバック・バンドを務めていた彼らは72年に新興レーベル「アサイラム」より「イーグルス・ファースト」でデビュー、大空を自由に飛び回る“鷲”の如くクリアで軽快なサウンドは大いに注目を集めた。シングル・カットされた「テイク・イット・イージー」は“陰”の「ホテル・カリフォルニア」と対極をなすイーグルスの代表曲である。次作「ならず者」ではやや落ち着きを見せるが、フォーク&カントリーフレイバーあふれる秀作である。サード・アルバム「オン・ザ・ボーダー」ではアクセル全開、ノリの良いロックン・ロールを聴かせてくれる。トム・ウェイツのカヴァーでスロー・バラードの名曲「オール’55」も収録されており、味わい深さも感じさせる。そして前述の「呪われた夜」、「ホテル・カリフォルニア」へと続く。
 本作は今なおイーグル一番の代表アルバムとされており、セールス的にもトップであるが、これほどまでにバンドの終焉を暗示した悲壮感あふれるアルバムは他に類を見ない。それまで年1作のペースでアルバムを制作してきた彼らはその後制作面での苦悩からか約3年間沈黙に入る。
 満を持して発表されたアルバム「ロング・ラン」では肩の力が抜け、全ての苦悩を吐き出したかのような雰囲気に加えて円熟味を増し“イーグルス健在なり!”を強烈にアピールした。
 翌年には初のライブ・アルバム(2枚目)を発表し、順調な活動を続けるかと思われたが既にグループとしての余力は残っておらず82年5月の解散へと至る。
 解散後は各々のソロ活動が活発になり、グレン・フライ、ドン・ヘンリーはよりポップなアプローチで成功を収めている。その後94年に突如再結成、新曲4曲とMTVスペシャル・コンサートでのライブを収録した「ヘル・フリーゼス・オーヴァー」発表したが、これは他のバンドにもよく見られる“同窓会”的意味合いが強く感じられた。
 ツェッペリンの「天国への階段」にも匹敵するほどインパクトのギター・・・ほろ苦い思い出とともに「ホテル・カリフォルニア」を体験した世代にとって涙なくして聴くことは出来ないであろう・・・。 (中野 亮)