ナッキーのこれだけは聴こう



 1976(昭和51)年、英米のロック・シーンは転換期を迎えた。クイーン、キッス、エアロスミスが“御三家”と呼ばれニュー・ジェネレーションのハード・ロックとして人気を集め、ベイ・シティ・ローラーズを頂点とするアイドル系ロックがこれまでのロック・ファン以外にも層を広げていった。
 その陰で、日本では絶大なる人気を誇った2つの大物ハード・ロック・バンドに生じた亀裂・・・ディープ・パープルの解散、そしてユーライア・ヒープのリード・ヴォーカリスト、デヴィット・バイロンの解雇・・・という事態が起こり、プログレッシブ・ロックの大物たち・・・キング・クリムゾン、イエス、EL&P、ムーディ・ブルース・・はいずれも休眠状態にあり、「プレゼンス」「永遠の詩(ライブ)」とたて続けに発表したレッド・ツェッペリン以外の旧勢力はやや片隅に追いやられているムードであった。
 新しいムーブメントとしてパンクが台頭し出したのもこの年で、パティ・スミス、ラモーンズ等がじわじわと人気を得、翌年デビューのセックス・ピストルズ、クラッシュ、ストラングラーズらのブレイクで一時代を築く。
 この混沌とした年にデビュー、極めて個性的でありながら奇をてらったところがなく、スペイシーかつメロディアスなサウンドがいつまでも耳に残る・・それが“ボストン”である。
 リーダー、トム・シュルツによって造り出される計算し尽くされたサウンド・・・それは決して無機的な冷たさを持つものではなく、ギター、ヴォーカルを中心とした音造りはヴァラエティに富み、ポップ・チューン、パーティ向けダンス・チューンなども数多くこなし全米でのAM、FMエアプレイも抜群に多くアルバムセールスも新人バンドとしては記録的なものとなった。
 その後作品ごとにメンバー・チェンジを繰り返し、23年経った今残っているのはトム・シュルツだけである。その間のアルバムも本作を含めてたった4枚と超寡作であり、2年後に「ドント・ルック・バック」発表後はなんと8年に1枚のペースである。すでに最新作「ウォーク・オン」から5年経過しているが、このペースだと20世紀中の新作発表は無理であり、2002年まで待たなければならない。
 高校2年の時からリアルタイムでずっとボストンに接してきた私にとって、やっと5枚目にめぐり逢えるのは42歳の時であろうか・・・・。
 変化がないのはわかっていても、われわれに長い間新作を期待させ続ける・・・ボストンは本当に偉大である。
(中野 亮)