徒然なるままに MOS-FETからパーツの音まで独断と偏見

MOS-FET(Nチャンネル)
 今はすっかり2SK2554がFETパワーアンプの主流だが、それまではUHC、UHC2という型番不明なミステリアスなデバイスのお世話になっていた。(2SK851も一度だったか出番があった。)しかも、某メーカーにダイレクトに依頼し1個1600円もした記憶がある。異常といえばそうだが、そんなこと(流通)は長く続くはずも無いのは明白。しかし、他に方法がなければその間はこの手ずるに頼る以外は無い。No.159プリメインのときにUHC2を1度だけ使用したことがあったが、2SK2554が出るやいなやすぐに取り替えた。
 今回のNo.192のパワー部製作は色々と実験したいから、この取り替えて保管しておいたUHC2を始め、手持ちの代替パーツに汎用電源、2SK2554の代替FET等多彩な組合せでケースの中を満たすことになる。
 廉価に終段パワーの石を確保できるということは、アマチュアにとってこの上ない喜びである。ペア漏れのものは電源遮断型保護回路に回せる。2SK2554の代替FETについては検討中だが、仕様は2SK2554に酷似したものが無難だと思う。
 そういえば、2SK2554とて過去にはNFBが不安定で採用にならなかった時期があったはずだが、あれは2段目にカスケードを使用していないため現れた症状だと思われる。最近あまり使われない2SJ72の後継、2SJ74も良くないと言われた時期があったような?。

ハンダの音〜部品(フィルター)による音の変化
 パーツはそれぞれが融合(一つにとけあうこと。)せずにハンダの仲介で接合(つぎあわせること。くっつくこと。)しており、この点ではハンダの(で)音を聴いているとも言える。接点(二つの回路間に電流を流し、またはその電流を遮断する接触部分。[岩波国語辞典])を避けて接合しても融合には至らない。
 ハンダの音とは何かと言うと、思うところ透明で付加音がしないのが良いハンダであり固有の音が伴ったり、情報が欠落したりするものは不可と言えるから、パーツ本来の持ち味を生かすものが最良であって調味料的要素は不要である。
 かくいう私、通常は千住金属のものを使っているが、ロシアの6C33C-Bのようにタイトソケットが加熱しソケットのハンダが溶けるといわれるようなところには、銀の混入したものを使った。音は明らかに千住とは異なる。冷ややかというか、すっきりというのか綺麗過ぎる感がある(これを麗淡というのか)。そして、熔解温度が少し高く、ハンダ面に輝きを残すのは難しい。
 技術的には半球面で輝きのあるようにすべしとの話もあるが、私はいつも仮にハンダをしておいて音が出たら完璧に仕上げようとの考えから、ハンダは最小限としており、配線までしてしまうと結局はそのままになることが多い。高周波でいう表皮効果があれば表面積の多いことが有利になるから、プリントパターンではなく撚り線に歩がある。
 アマチュア無線時代は、パーツの端切れ線が良いと思いこれを多用した。というか、届くところはすべて切らずにランナーとした。金田アンプではこれはご法度だから、パターン隣でも7本撚線のお世話になる。長いか短いかで大きく音に影響するのだろうか、そのような箇所が積み重なれば相当のものとなる。こうなると半田とパーツの端切れ線の音を聴いているのだろうか。
 ところで、パーツに固有の音というのは存在するのだろうか。一定の条件のもとに特定の音が生まれるものであって、パーツが音に与える影響は非常に少ないのではないかという疑問があるが単なる勘でそう思うのである。
 一定の条件における筆頭は、回路である。パーツはそれぞれに目的があり、パーツを構成する成分はパーツによって様々である。このような無機質の寄り集まりがひとつの目標に向かっても拒絶反応を起こさないのは生体ではないからだ。回路は譜面でパーツは楽員(楽器)、私は指揮者となる。指揮者の思い通りに、楽員(楽器)に奏でさせた音を空間でミックスして音楽となすのはハンダだ。
 パーツひとつだけでは音にはならない、他のパーツ等と相俟ってレコード溝の微弱な振動の増幅を積み重ね初めて音となる。結局、アナログレコードに関して、このシンプルな仕組みは永遠に変わらない傑作と言える。
ひとつ別の話題、電源コンデンサーを例に取れば、QUADの音が、英国製のコンデンサーで決められているということを聞くが、それは質の問題であり惚れていれば良いことだ。
 パーツは音の振動の違い(音色)を表現できないのではないか。レコードの溝に刻まれたもの以上の音は出てこないのだから、その振動(楽器のエネルギー)をそのまま忠実にスピーカーに伝えて初めて良いものは良く聴こえ、それなりのものはそれなりに聴こえるのではないだろうか。普通のアンプは、回路の途中で多くの情報欠落が生じているためであり、その欠落の組み合わせを色々と変えているだけを持って特色だとすれば、欠落の要因となる接点や不要なパーツは省かねばならない。真空管も固体音があるとされているが、石とは自ずから違う音と思うし、初めて聴く場合はその違いを新鮮さと感じるのかも知れないが情報欠落の無いものが最高であり、その見地からはピンへの直半田が論理的だ。
 石(半導体アンプ)に比べ真空管アンプは回路がシンプルで一つの部品の音への影響が大きいとも言われるが、石を球に置き換え、アウトプットトランスの無い金田アンプではパーツも同等数でコストは安く出来る。せいぜい、耐圧の高い電解コンデンサーを使うと言うことくらいだろうか。
 これらの結晶が金田アンプだと確信するのであり、回路は完璧だとすれば、電圧を発生させ信号を増幅することさえ、しっかりと守れば出てくる音は間違いない。
 然しながら、金田明彦先生は、パーツやその方向も含めて言及されており、これは確かな技術に基づいた実験と良い耳が成せる技であり、私には到底及ばない。早くからの研究と数多くの実験を通して確立された根拠がある。果たして、氏の手法を模倣するのが確かで効率的だと言う絶対的信頼で、そのまま使わせてもらっており、感謝あるのみ。
21.02.21

 最近、またデバイスの値段が気になり、1円抵抗で組むアンプとやらは如何なる音なのか実験をしてみたが、私の悪い耳では判別不能だった。なんと情けないことなのか。今回製作したNo.192パワー部は入門用にも最適なものだと思う。2SK246も@20で手に入るからFETと抵抗のバランスを考えても1円抵抗に固執した。今回使用したパーツで一番高いのは何とコパルTM-7P半固定VRだ。
 パワーFETの2SK3163は@180だったから半固定VRの半額以下だ。それが気に入らず@63のコパルCT6Pにしたが、きちんと狙いが定まらないという使い勝手の悪さもある。
21.03.19