それはたった一枚のレコードから始まった

楽譜のイラスト

 平成2年の冬に語った夢が、現実に動きだしています。私たちの活動の一端でもご理解いただければと思い同封のパンフレットをつくりました。ご笑覧いただければ幸いに存じます。また、パンフレットと重複するところがあろうかと思いますが、レ・コード&音楽による町づくりについて若干述べさせていただきます。
(パンフレットは添付省略)
                       ”一枚のレコード”会員  ph7

蓄音機のイメージ

わが郷土新冠から文化の香り高い情報発信を

 いま全国各地で文化を中心としたまちづくりが進められていることはご周知のことと思います。
 道内でも、絵本や童話・漫画といった素材もまちおこしの題材となっております。このような中にあって、新冠町は、世界初・もちろん日本でも始めてといわれている「レコード文化」に狙いを定めて、全く独創的な事業展開を進めております。
 しかしながら、これから使われなくなるものを集めてどうするのか、または、なぜレコードでなければならないのかという疑問もあるところです。
 彼の天才発明王でありますエジソンが、レコードを発明したのは19世紀後半のことであり、それから既に110数年の歳月が流れたいま、残念なことではありますがレコードの歴史はもうすぐその幕を閉じようとしております。
 人類が、はじめて音の記録物としてのロウ管レコードに出会ってから、近く製造中止となるLPレコードに至るまでの間には、レコードの溝には、数え切れないほどの人と物に関する歴史が織りなされております。この様なことから、レコードを21世紀の文化遺産という位置付けで収集するものでありますが、このレコードを限りなく集めて、21世紀へ継承する機会は今をおいてほかにないといっても過言ではありません。つまり、裏を返せば、この町おこしは 100年に一度、遭遇できるかどうかの大事業であります。

 音楽は、みんなの心の中にある思い出であり、人は音を通して生きているわけであります。そこに楽しみがあって、話すこと聞くことが出来てよろこびを感じるわけですから、生活や人生に大切な「心の健康」や「心のバランス」等を意味することにもなります。心休まる自然の環境がたくさんある新冠にモノから心へ、そして時間へと豊かさの尺度が推移している時代に「レコードと音楽」のスペースを広げ、ここに住む、あるいは訪れる人々に「心の健康やバランス」を贈り届けていきたいと考えております。
 子どもの頃から、音楽に接することの効果と、お年寄りとのふれあいを有機的に関連づけて、子どもと老人のコンサートなども町が収集している器材を活用して、自然発生的に生まれるものであります。健康面では、何かとスピードアップしている時代に年代物の蓄音機で緩やかな時間の流れに接することにより、特にお年寄りは安堵と心の健康を高めることが可能であると考えます。

 産業との関連につきましては、このレコードを通して町の名前が全国に発信され、速やかに、しかも穏やかに行き渡ることが必要であります。近い将来、レコード音楽で有名な新冠の農畜産品・海産品など豊かな大地に育まれた、この地から生まれる色々な産品に付加価値が加わり、多くの人々が興味と関心と真の心を寄せることと思われます。そのときに「新冠ブランド」が、確固たる地位を得るものであります。つまり、この事業と産業の振興は同時進行できない難しさを持ち合せているということであります。
 ただし、音楽を聞かせて家畜の飼育や野菜の栽培を効率化している事例がありますので、関係機関の協力のもとに試験的取り組みは可能であると考えます。さらに、町が取り組んでいる施策について、”一枚のレコード”のように民間レベルで側面から支援することが、自然体での民官一体であると思うわけです。
 町づくりは、行政だけが先行しても民間だけが一人歩きをしても成しえるものではございません。この事業に対して、全国の方々からの積極的でしかも前向きなアイデアの提供を期待するところであります。

 いま、将来を見通したまちづくりがもとめられており、キーワードは地域文化であります。郷土愛に燃え、まちづくりに情熱を傾けている町民の方々は勿論のこと、他から訪れた人々にも住みやすく暮らしやすい町であり、何度も足を運んでもらえるような町でありたいと思うわけであります。そのような時に世界的規模で町民が誇れる文化事業が生まれることは、文化人の定着などや関連企業の誘致できる可能性があるわけで、これにより若者のUターンも期待でき、また、町を離れて生活している人々の心の糧となるものであります。町を誇れることは、必ず子ども心にも大きな自信と説得力となって、キラキラと輝く瞳で町を語ることができるものと確信いたします。
 近い将来、文化の殿堂としての(仮称)「レコード館」が必要となり、あふれるほどのレコード図書館を活用した優れた音楽を奏でるホール。ロウ管蓄音機や世界の名器を展示した歴史コーナーなどができれば素晴らしいことであります。
 たった一枚のレコードに夢を託したら多くの人々の善意が集まり、現在約5万枚のレコードそして、機器類ではジュークボックス・英クォード社のコンデンサースピーカー、英EMG社の蓄音機などに囲まれております。これからもたくさんの思い出が集ると確信するところであり、人の心を音にした新しい故郷がもう一つ生まれようとしているのであります。

       ”一枚のレコード”の夢              にいかっぷ

2001.03.23 1版

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参考
”一枚のレコード”設立会員
 中川正巳(代表)
 渡辺博志
 道政 満
 湯川 剛 以上4名