CD兼用真空管プリアンプ改造記シルバニア12AT7と6189

 No.194.CD兼用真空管プリアンプの回路を見、発想の転換に衝撃を受け早速、既存(No.157タイプ)の真空管プリアンプの改造に着手。とはいってもトグルSW1つと入力ジャック2つを穴あけ取り付ける、あとは15kΩ(手持ちの関係で16kΩとした。)のスケルトン抵抗2つを配線して終わり。こんなにも簡単なことで、優れた真空管プリの音をそっくりCD再生にシフトできる。すぐにCDを聴いた。イーグルスのホテルカリフォルニアだ。レコードとほぼ遜色の無い音には驚いたが、VR(10KΩA)位置を10時以上に上げると、左CHが発振した。(実は右CHもわずかに発振していたのだろう。)発振は、高域部のスピーカーで確認したので、受け持ちのTRパワーアンプに原因があるのかと思いながら、原因不明でしばらくVR位置9時程度で聴いていたが、あるとき試験的に3way3CHメインスピーカーから全域帯スピーカ(4Ω)に繋ぎ換えて聴いたところすぐにハム音を発し、今まで低域用に使用していたパワーアンプの保護回路が落ち、左CHの終段2SK2554が飛んだ。ドライバーの2SK214も道連れである。




 これはもう、金田明彦先生に聞くしかない。答えは、「ステップ型位相補正回路の定数を見直す必要があるとのこと。SE120pFとニッコーム2.2KΩを220pFと1KΩに換えること、それでもだめならT3の入力に100Ωの抵抗をシリーズに入れること。」結果、220pF(手持ちの関係でスチロールコンデンサーだ。オーディオには良い結果が出ると信じる。)と1KΩの組合せでは発振は止まらず、コンデンサー値を上げてみても限界があるため、抵抗値を上げて行き1.5KΩ程度で発振が収まりかけたが、VR最大では、まだ完全ではない。
 最後の手段、T3の入力に100Ωの抵抗を入れると発振は完璧に止まった。今まで、DCオフセット電圧の調整のみで、オシロスコープでプリの出力波形を見たことが無かったが、これを契機にオシロでの確認も大切だと痛感した。なお、発振は左右CHで相互に干渉するので、ステップ型位相補正回路の抵抗を2KΩ半固定に仮ハンダ付けし片方の発振が止まる位置(抵抗値)とし、もう片方もほぼ同様の位置にして発振しなければOK。
 しかし、この時期(12月)電気のオイルヒーターを使用しているため、ヒータONになるとVR最大の少し手前で発振を確認。商用電源の電圧低下による高圧のレギュレーションのせいか。(実際は、後述のとおり終段のIo不足)
このプリの高圧は、ダイオードと整流管を切り替えられるSWを付加しており、これを整流管側にするとVR最大の少し手前で発振する。こうなると、フラットアンプの高圧をレギュレータで安定化するのが早道か。
 No.157タイプのプリは、アルミシャーシのままのもので、配線はバラックの空中配線である。理由は、色々と実験を繰り返すには、基板式で無いほうが増殖しやすいからだ。今回も、いとも簡単にパーツ交換を何回も繰り返すことが出来たのは空中配線のおかげである。しかし、そろそろきちんとしたものにまとめてあげる必要がある。今回を最後にもうこれ以上、改造の余地はないと思われるからだ。

レギュレータで安定化
 +125Vのレギュレータを追加して、発振は止まったが、整流管を使用するには+110Vくらいにしたいが、−電源とのバランスが崩れるので、+125Vに落ち着いたのだ。整流管を使用しなければ、+135Vくらいに上げたい。というのも高圧部ダイオードをSBD(A&R_Lab)に換えたので、高圧が140V以上となるからだ。(この1台目のプリアンプのトランスはTS190を使用)
 VR角度LPとCDではVR角度が大きく違うので、CDのレベルを上げたほうが良いと思うが・・・

2台目を改造
 このプリアンプは、元々No.150タイプだったもの。フラットアンプの5755(WE420A)をECC81に替えたもので、トランスの80Vタップを使うため、TS190トランスに比べ高圧が低い、LP再生には問題はなかった。(どうしてもと言う時は、80Vに6.3Vを上乗せしても良いのだが・・・)
2台目の真空管プリアンプ(こちらもNo.157タイプ+TS150トランス)の改造に取り掛かる。入力ジャックは加工が楽な右側のサイドパネルに取り付け、トグルSWは既存のものを使った。
 デバイスの変更のみでは発振したので、レギュレータを追加するしかないと思う。ここでも、左CHの発振が大きい。SEコンを換える。抵抗を換えるたびにVRを少し大きくしても発振しなくなるが、あるところで発振する。その場合、右が止まっても左が止まらない状態が続く。1台目も同様だったので、左CHに類似した問題が潜んでいるのか。
 なお、VRはスケルトン抵抗とロータリーSW式、最大3KΩ程度なので1台目の例からして発振するはずはない。3KΩ程度だと10KΩAのVRにして回転角度は1時位でないか。この位置では絶対発振はしないと思いチェックすると、左CHのmutingのアース配線を外したままだった。なんと無駄な時間を費やしたことか。
 結局、ステップ型位相補正回路の定数を220pFと1KΩに換えることで足り、T3の入力に100Ωの抵抗をシリーズに入れるには及ばなかった。もちろんレギュレータも不要だ。
 反省 こちらのアンプから先に改造した方が良かったようである。
ここで、1台目のアンプに施したものを逆の順序で取り外したくなるのが心理。まず、レギュレータを外すも大きな変化は無い。次にT3の入力の100Ωの抵抗を外すも変化無し。結局、ステップ型位相補正回路は220pFと1.5KΩに換えることで落ち着いた。ただし、この状態でSW投入し1分で高圧が印加され、VR最大の手前では発振するのだが、時間とともに発振が収まって1分程度で収束する。
 パーツを取り付けるときは、案外時間がかかるもので、温まった球がある程度元に戻っていたのか。取り外すときは早いもので、再度SWを投入するもまだ球には少し前の記憶が残っているので発振が起こらないのか。なお、商用電源の電圧低下による発振は、球が温まり安定してからは発生しない。
 結局は、CDを聴くときはLPを少し聴いた後にすれば、反転アンプも落ち着いているということだ。

3台目を改造
 2台目と同様に問題なく改造を終える。こちらもNo.157タイプだが、元々はNo.150タイプ。
NFB抵抗値が最大3KΩ程度と低い(ゲインが低い)ため安定しているのか。このアンプもNFB抵抗を10Kや20KΩのタイプに替えると発振することだろう。
1台目に戻って
 電源部をTS150トランスのものに繋ぎかえると、VR回転角度は1時から2時で発振を始める。電圧が低下し、ECC82のIoが減ったからなのか。さっそくチェックすると確かに終段のIoは2mAしか流れていない。これを5mAまで上げていくと発振は止まるが安定的には6mAだ。なお、+110Vのレギュレータを入れても入れなくても変わりはない。ここでまた、当初の金田先生の指示通りにしようと「SE120pFとニッコーム2.2KΩを220pFと1KΩに換えること」の言葉を思い出す。コンデンサーは指示通りなのでそのままとし、抵抗を1KΩに戻した。VR回転角度は4時位で発振し時間経過を見ても止まらない。抵抗を1.2KΩにすると止まった。今後は、この組合せで行こう。
電源が2スタイルあるため、繋ぎかえると条件が異なりこのようなことが起きる。電源部をTS150トランスのもので調整して、電源部をTS190トランスのものを繋ぐと、終段のIoは流れすぎることとなる。二兎追うものは・・・である。

2009.1.17