真空管プリアンプの音
              

                
                        2SC5460データ
 
 真空管プリアンプの音をはじめて聴いたのは、金田明彦先生が新冠町で初めて製作会&試聴会を行った(1994.5.14〜15)ときだが、あれから15年が過ぎ、自分もそして取巻く周りも同じスピードで過ぎていった。あのときの真空管プリアンプは、高圧が乾電池、ヒーターが12Vのバッテリーでアンプ本体に電源SWはなく、キャノンコネクターの抜き差しでon/offを行っていた。思えば懐かしくもあり隔世の感といえば大げさだが、現在の真空管プリアンプは、完成の域に達していると感じる。
 それにしてもあの時の真空管プリアンプが奏でた音楽は参加者全員が感動した。再生音で感動したのは後にも先にもあのときが初めてだ。
真空管といえばシャーシにソケットが乗っているのが普通だが、基板に乗せてしまった発想の転換が始まりで、そのうちソケットを廃したダイレクト配線となった。真空管もEF86からECC81・82、WE系の球へとシフトして、音の統一を図って行くようになる。その間、フラットアンプのオフセット電圧の変動が悩みだったが、これを自動で調整するAOC回路の開発は目から鱗で、これにより石のプリよりも球の方がオフセット電圧の変動は少なくなった。
 その後、金田明彦先生の製作会&試聴会で何台か完成させ、それらの試聴も行った。あのときの音もアンプによって異なったのを思い出す。使用した球は違っていたから、それによる影響だと思うが、素直なブーミーさのない音、図太くジャズっぽい音。イコライザーがEF86、フラットアンプがEF86+石という構成のもので、終段は2SC959だ。クラフトの会の仲間の製作したこの真空管プリアンプをオール球に改造したときのフラットアンプ基板をストックしてあるが、あれに貴重な2SC959が付いていたのを思い出した。
 
 DC−Filesから
'90 07 117 真空管式DCストレート プリアンプ
'94 03 132 真空管〜FETハイブリッドDCプリアンプ
'96.03 141 ハイブリッドDCプリアンプ 真空管+バイポーラーTR
       スーパーストレート型
'97.03 145 真空管DCプリアンプ EF86ステレオ
'98.06 150 真空管DCプリアンプ EF86 WE420A ECC82
'99.05 154 真空管DCプリアンプ WE310A(MONO)
'99.12 157 真空管DCプリアンプ EF86 ECC81 ECC82
'02.02 166 真空管DCプリアンプ オールWE真空管採用
       AOC(オートオフセット電圧調整回路)搭載
'03.12 175 真空管DCプリアンプ オールサブミニチュア真空管
       構成アンプ回路を基板1枚に実装
'05.08 184 真空管DCプリアンプ WE403A・384Aをソケットを
       使用せずハンダ付け配線
'06.04 187 真空管DCプリアンプ WE403A/B ソケットレス
       ダイレクト配線 SE0.1を東一電機製マイカーに変更
'07.10 194 MC/CD兼用真空管プリアンプ ラインアンプを
       反転増幅と非反転増幅に切り替えて入力信号を選択


 このように列記してみると、真空管プリアンプは数多くあるものだと感心するが、基本形はNo.157だと思う。トランスもTS190が共通に使える。当初は、TS150で高圧はダイオード整流のためAC80V×2で足りたが、その後、レギュレーションの良くない整流管をスタンダードとしたためAC100V×2のTS190にシフトしている。なお、最近はTS190から210Vを取り6.3Vも4Aから1.4AにしたTS201に型番が変わったようだ。
 真空管の中でも比較的過酷な条件で使用される整流管の寿命は電力増幅管より短いといわれているが、整流管の寿命については、明確な記述資料は手元にない。500時間ということが記憶にあるが、私のような少ない聴き方でも1年で交換する必要があるのか。
 H21.1.31K氏宅、H21.2.3N氏宅で真空管プリアンプNo.157(CDも聴ける改造版)の試聴会を開催。改めて球の威力を目の当たりにした。

 それぞれのシステム
K氏宅 パワーアンプNo.140の6C33C-B+No.130パワー
    +市販アンプの3wayにJBL_S3100 ヤマハGT2000
    +オルトフォン-supreme30(変更前プリ91.9 No.122)

N氏宅 パワーアンプNo.140の6C33C-B+ No.133FETアンプの
    2wayにEXCLUSIVE_EW-302 DENON_DP70+オルトフォン
    -supreme30(変更前プリ95.6 No.128)


 それぞれの石のプリアンプを球に代えたら、目から鱗とはこのことである。低域のベールが数枚剥がれた(普通は中高域だ)。低域がこれほどまでにしっかりと芯を持ちブーミーさが解消されたのには驚きである。MFBコントロールVRを調整しなおすほど変化する。アルテック系のコーンの軽いスピーカーが好きな私は個人的にはJBLの重たく堅いコーンは好みではないが、そんな次元を超えている。一方、EXCLUSIVEは30cmのウファーだが、ホーン型エンクロジャーの効果だろうか30cmとは思えない凄い低音である。怒涛のような低音、しかも団子状態の音には決してならない。
 いままでは、レコードを選んで聴いていたが、これからはどのレコードをかけても以前にはない説得力(魅力)を感じる。プリアンプとは凄い力を持っていると改めて感じた。
 こうなると真空管ソケットを使用しないダイレクト配線なら、いかほどの音楽性が向上・再現されるのか?試したくなり、またして音楽を聴く時間を削ることになる。

 フラットアンプ流制限回路の2SC1775Aの耐圧は120V、ギリギリでとても無視できないから2SC5460(下図)に変更した。最近になってパーツBOXを見ると2SD756Aがあるではないか。今まで、2SD756だとばかり思っていたから、1775Aと置き換えても意味がないとあきらめていた。これで、1775A・756Aと5460の音の比較もでき何と楽しみなことか。


2009.02.07